2026年04月06日号

(2026年03月30日~2026年04月03日)

先週の為替相場

先週半ばまでドル高の調整目立つも、有事のドル買い根強い

 先週(3月30日-4月3日)の外国為替市場は、トランプ米大統領による対イラン政策の変遷と、それに伴う地政学リスクの増幅、さらには年度末・四半期末の需給要因が重なり、極めてボラティリティの高い展開となった。週前半は早期停戦に向けた期待がドル高一服につながったが、1日(日本時間2日午前)のトランプ大統領による演説が強硬姿勢を示すものとなり、市場は再び「有事のドル買い・原油高・株安」の構図へと回帰した。週末にかけてはイースター期間に入って取引参加者が減少し、様子見ムードとなった。

 週初30日の東京市場では、28日にイエメンの親イラン武装組織フーシ派(用語説明1)がイスラエルへミサイル攻撃を行ったことを受け、地政学リスクが意識された。ドル円は27日に付けた2024年7月以来の高値1ドル=160.41円を小幅ながら上回る160.46円を記録した。しかし、このドル高円安に対して三村財務官(用語説明2)が「断固たる措置が必要になる」と、これまで以上に踏み込んだ表現で牽制。これを受けた介入警戒感から、ドル円は159.80円台へと押し戻された。その後、トランプ大統領がイランとの停戦合意に前向きな姿勢を示したことで、ドル買いの勢いは一服した。海外市場に入っても介入警戒感からの円買いが継続し、159.30円台を付けた。一方、対ユーロやポンドでの有事のドル高が継続し、ユーロドルが1ユーロ=1.1443ドルを付けるなどの動きが見られる中、ドル円も下げ一巡後は反発を見せた。

 31日は年度末・四半期末の節目であり、ポジション調整(リバランス)が主導する展開となった。東京市場では、前日の安値からの反発が159.97円までにとどまり、160円の大台を付けきれずに反落した。米紙が「トランプ大統領は側近らに対して、ホルムズ海峡が事実上閉鎖されたままでもイランに対する軍事作戦を終了させる用意があるとの立場を示した」と報じると、紛争早期終結への期待からドル円は159.49円付近まで下落。ユーロドルも1.1491ドルまで反発するなど、ドル高は一服した。海外市場では、ユーロ圏CPIが予想を下回ったことで、エネルギー価格の上昇にもかかわらずユーロの上値は重く推移した。NY市場に入ると、期末に伴うドルロングの解消が本格化。対イラン軍事作戦終結への期待が広がる中、ドル円は158円台を付けた。市場では日本の通貨当局によるドル売り介入へのヘッジとして、プットオプション(円買い権利)の購入が強化されるなど、防衛的な動きも目立った。

 1日に入ってもドル売りの流れが続き、ドル円は東京市場で一時158.45円を付けた。しかし、UAE(アラブ首長国連邦)が軍事関与を検討しているとの報道に反応し、159.01円まで買い戻されるなど、イラン情勢を巡る不安定な動きが続いた。その後は原油安・株高の動きも見られたが、1日夜(日本時間2日午前)のトランプ演説を前に、外国為替市場の動きは限定的なものとなった。

 日本時間2日午前のトランプ大統領の演説を受けて、ドル高が強まった。市場はイラン紛争の終結に向けた具体的な発言を期待していたが、大統領は早期終結の可能性に触れつつも、「今後2-3週間は激しい攻撃を加え、石器時代に戻す」などの極めて強硬な軍事方針を強調した。これにより、有事のドル買いが再燃した。

 発言を受けて原油先物は106ドル台へ急騰。ドル円は159.48円まで急伸し、ユーロドルは1.1515ドルまで下落した。海外市場でもこの流れは継続し、中東紛争のバロメーターである原油は108ドル台まで高値を伸ばした。

 3日はグッドフライデー(聖金曜日)により、欧米の主要市場が休場となった。アジア市場でも豪州や香港などが休場であり、取引は極めて閑散とした。ドル円は159円台、ユーロドルは1.15台前半で膠着状態となった。米連邦政府の休日ではないため米雇用統計などの指標が発表されたが、強い結果に対しても市場の反応は限定的にとどまるなど、大きな動きにはならなかった。

今週の見通し

 

 今週もイラン紛争をにらみながらの展開が継続するとみられる。ドル円は節目の160円台を再びうかがう展開が見込まれる。ターゲットは2024年7月に付けた161.95円。ただ、同水準手前では日本の通貨当局によるドル売り円買い介入の可能性が高まるだけに、動きは慎重なものとなりそうだ。

 有事のドル買いによるドル全面高局面でのドル売り円買い介入は、効果が限定的になる可能性が高い。ただ、1回目の実弾介入はそれなりに値を動かすものとなりそうで、ドル買いには慎重さが求められる。一方、介入期待でのドル売りポジション作成はリスクが大きい。もともとは160円台に乗せたあたりでの介入を期待する向きが多かったが、円安というよりもドル全面高の様相を呈しており、介入実施のハードルが上がっているとの見方がある。161.95円近くまで介入が入らないのではとの声も広がっているだけに、売りからも入りにくい地合いである。

 ドル円は158円台半ばから160円台半ばをコアに、方向性を見極める展開となる。振幅を交えながらも流れは上方向とみており、161.95円トライの可能性を意識している。ただし、介入が入れば流れが一気に変わる点には十分な注意が必要だ。

 ユーロドルは戻り売りの流れが継続か。1.1600ドル手前が重くなりそうだ。一時広がった欧州の早期利上げ期待がやや後退しており、ユーロ売りが入りやすい地合いとなっている。

 ユーロ円はドル主導の展開で不安定な動きが見込まれる。ドル円が160円台に乗せて上昇が加速すれば、ユーロ円もしっかりとした動きになる可能性が高い。

用語の解説

フーシ派 シーア派の分派であるザイド派を基盤とするイエメン北部の親イラン武装組織。フーシ派の名前の由来は、2004年に治安当局に殺害された組織の中核的人物であるフセイン・バドルッディーン・フーシ師である。正式名称は「アンサール・アッラー」。2014年以降、イエメンの首都サヌアを含む北部・中部の広範な地域を実効支配している。
財務官 財務省において、事務次官、国税庁長官に並ぶ次官級ポスト。財務省国際局の所管事務を専担する。為替介入は財務大臣の権限に基づいて実施されるが、財務官は現場責任者として、実質的な介入の実施判断を行う。

今週の注目指標

米ISM非製造業景気指数(3月) 4月6日23:00
☆☆☆
 1日に発表された3月のISM製造業景気指数は52.7と市場予想の52.3を上回り、2月の52.4から小幅に上昇した。これは2022年8月以来の高水準である。新規受注が2.3ポイント、雇用が0.1ポイントそれぞれ悪化した一方、納入遅延が3.8ポイント上昇し、全体を押し上げた。同項目は景気の過熱時にも上昇するが、今回に関してはイラン紛争による供給の混乱などが要因であると推察されている。総合指数の算出には影響しないが、調査項目のうち仕入れ価格が78.3まで上昇しており、イラン紛争の影響が懸念される。
 非製造業の前回値は56.1と約3年半ぶりの高水準であった。今回は55.0までの低下が見込まれているが、製造業同様に仕入れ価格にも注目が集まる。イラン紛争の影響が強く出ているようだと、物価高対策としての利上げ期待が広がり、ドル買いとなる可能性がある。ドル円は160円台に向けた動きが強まるとみられる。
米FOMC議事要旨(3月17-18日開催)
4月9日03:00
☆☆☆
 8日(日本時間9日3:00)に3月17-18日開催のFOMC議事要旨が公表される。同FOMCでは、市場予想通り政策金利が3.50-3.75%で据え置かれた。1月FOMCでは2名の委員が利下げを主張したが、3月FOMCでは、そのうちウォラー理事が据え置きに転じた。同氏は1月の会合後、「2月の雇用が強ければ据え置きに回る」姿勢を示していたが、実際には2月の雇用は予想を大きく下回るサプライズな弱さを見せた。しかし、それでも据え置きに回らざるを得ないほど、物価高への警戒感が強いという印象を与えた。
 パウエル議長はFOMC後の会見で、インフレ鈍化の進展が見られなければ利下げ再開はないと発言。関税によって押し上げられてきた財のインフレ減速が重要であるとの姿勢を示した。イラン紛争については、不確実性が高まったとしているものの、エネルギー価格上昇によるインフレへの影響は一時的であるとし、通常それを理由に利上げを行うことはないとした。
 今回対象となっているFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)では、インフレ見通しが12月時点の2.4%から2.7%に引き上げられた一方、年内1回の利下げ見通しを維持するなど、紛争に対するFOMC内の反応は落ち着いたものであった。ただ、世界的に原油高による物価高への警戒が広がっており、当局内の詳細な姿勢を議事要旨で確認したい状況となっている。声明や会見で見られた以上に物価高警戒が強いようであれば、利上げ期待が強まり、ドル高進行が見込まれる。ドル円は160円台をしっかりと付けて上値を試す流れになる可能性がある。
米消費者物価指数(3月)
4月10日21:30
☆☆☆
 2月28日に始まった米国の対イラン軍事作戦(オペレーション・エピック・フューリー: Operation Epic Fury)により、原油価格が急騰した。物価高の進行が警戒される中、3月の米消費者物価指数(CPI)が注目されている。
 2月のCPIは前年比+2.4%と、1月および市場予想値と一致した。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIも+2.5%と、こちらも1月および市場予想値と一致している。内訳を見ると、エネルギーが+0.5%(1月は-0.1%)と上昇。電気料金が+4.8%、ガス料金が+10.9%とエネルギーサービスの上昇が見られる一方、ガソリンが-5.6%と3か月連続で大きく下げて全体の伸びを抑えた。食品は、家庭用食品が+2.4%(1月は+2.1%)、外食が+3.9%と高水準を維持し、食品全体で前年比+3.1%と高い伸びを示した。コア項目では、財部門が+1.0%と1月から小幅に鈍化。中古車の-3.2%が押し下げ要因となった。サービス部門は+2.9%で変わらず、CPI全体の35.6%を占める住居費も+3.0%と横ばいであった。総じて、2月までは落ち着いた結果であったといえる。
 しかし、3月のCPIは前年比+3.4%と急加速が見込まれている。原油高を受けてガソリン価格が急騰したためである。1月と2月は電気・ガス料金の上昇をガソリン価格の低下が相殺していたが、3月はガソリン価格が一気に上昇している。米EIA(エネルギー情報局)のレポートによると、ガソリン価格(全米全種平均)は2月の1ガロン当たり3.039ドルから、3月は3.771ドルまで上昇し、前月比24.1%の急騰となった。週間ベースでは、3月最終週に4.126ドルまで達しており、原油高の影響の激しさが意識されている。
 食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+2.7%と小幅な伸びにとどまる見込みである。エネルギー価格の上昇は物流・製造コストを押し上げ、コア項目の物価上昇につながるが、3月時点ではその波及は限定的であったとみられている。
 ガソリン価格の上昇が止まっていないため、4月以降はさらなる伸びが見込まれる。3月時点で予想以上に伸びている、あるいはコア項目への波及が見られる場合は、米国の利上げ期待からドル高が加速し、2024年7月の高値161.95円を上回る可能性がある。

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