2026年04月13日号
先週の為替相場
中東情勢にらむ展開続く
先週(4月6日-10日)の外国為替市場は、中東情勢をにらみながらの展開となった。有事のドル買いの継続で始まり、2週間の停戦報道でのドル売り、安値からの反発という展開となっている。また、原油価格の乱高下を介して欧米中銀の利上げ期待が揺れ動く中、日本の交易条件悪化を背景とした「円の独歩安」が鮮明となった。
週初、市場は極めて神経質な動きを見せた。4月6日はイースターマンデーや清明節(用語説明1)により主要市場が休場となる中、参加者が限定され様子見ムードが漂った。しかし、水面下では米国・イスラエルとイランの緊張が緩和せず、トランプ大統領が設定した合意期限(日本時間8日午前9時)への警戒感が強まっていた。ドル円は159円台後半で推移したが、一時的な停戦報道と否定が入り乱れ、159.43円から159.83円の範囲で不安定な上下動を繰り返した。
7日に入ると、原油価格の急騰が相場の主導権を握った。NY原油先物が一時117ドル台を伺う展開となる中、インフレ加速懸念から欧米中銀の利上げ期待が再燃。一方で、エネルギー自給率の低い日本の経済構造が意識され、円売りが加速した。ドル円は心理的節目である160円の大台に迫り、ユーロ円は184円台、ポンド円は211円超えへと水準を切り上げた。NY時間には、イラン国内での爆発音報道やトランプ大統領の威嚇投稿により、ドル円は瞬間的に160円台を回復。実体経済の指標以上に、地政学リスクへの即時反応が相場を支配する「有事のドル買い・円売り」の様相を呈した。
8日になって、相場の潮目が劇的に変わった。パキスタンの仲介により、米国・イスラエルとイランが「2週間の一時停戦」に合意したとの報道が流れると、それまでの有事のドル買い一気に反転した。
ドル円は朝方の159.60円台から158.11円まで急落。NY時間には一時157円台まで値を下げた。原油価格の急落を受けて欧州株は急騰し、独DAXが一時5%高を記録するなど、市場には安堵感が広がった。この局面では、ドルの全面安とともに欧州通貨が買い戻され、ユーロドルは1.1709ドル、ポンドドルは1.3440ドル台まで上昇した。しかし、この安堵感は長くは続かなかった。
9日から10日にかけて、市場は再び不透明感に包まれた。一時停戦合意が報じられたものの、イスラエルによるヒズボラ(用語説明2)への攻撃継続やホルムズ海峡の封鎖懸念が拭えず、急落していた原油先物が再び反発を開始。これにより「原油高=円安」の構図が再浮上した。
また、目立っていたのが主要通貨に対する円の弱さである。ECB(欧州中央銀行)や英中銀(BoE)がインフレ抑制のための利上げ姿勢を崩さない中、日銀の追加利上げに対する市場の確信が相対的に低かったことが、円売りを正当化した。ユーロ円は186円台、ポンド円は213円台へと上昇し、クロス円主導での円安が進行した。
10日のNY市場では、米3月CPI(消費者物価指数)が発表された。総合指数はエネルギー価格の上昇を受けて高い伸びを示したが、コア指数が落ち着きを見せたことで、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策判断に対する過度な警戒は和らいだ。一方で、ウクライナとロシアの和平交渉進展への期待からユーロが買われ、ユーロ円はユーロ発足来の高値を更新する展開となった。
今週の見通し
週末にパキスタンの首都イスラマバードで行われた米国とイランの協議が決裂。トランプ大統領が米軍によるホルムズ海峡の封鎖を示唆するなど、対立が強まる展開となっている。この結果を受けて、週明けは有事のドル買いが広がる展開となったが、動きは限定的にとどまった。イスラエルによるレバノンへの攻撃の継続などもあり、両国の合意は難しいとの見方が広がっていたため、想定内という反応が見られる。
当面は中東情勢に注目しながらの展開が続く。今週は目立った指標発表予定もなく、市場の注目は対イラン情勢に集まりそう。
ドル円、クロス円に関しては日銀の利上げ期待後退を受けた円売りも材料となる。先週末時点で短期金利市場での今月の日銀金融政策決定会合での利上げ見通しは55%程度となっていたが、今回の協議決裂を受けた先行き不透明感から35%程度まで期待が後退。据え置き見込みが大勢となっている。
行き過ぎた動きへの警戒感もあり、ドル円は160円トライにやや慎重となっているが、流れは上方向とみている。じっくりと160円台回復のタイミングをうかがう展開か。
ユーロドルは1.17台前半の売りが重石となりそう。ユーロ円は先週の上昇基調がどこまで続くか。ドル円同様に日銀の早期利上げ期待後退を受けた円売りが支えとなりそう。
用語の解説
| 清明節 | 中国の伝統行事の一つで、先祖をしのぶ墓参りを中心とした日本でのお彼岸にあたる行事。日本でも沖縄では清明祭(シーミー)として盛大に行われる。 |
|---|---|
| ヒズボラ | レバノンを拠点とするシーア派の武装組織。1980年代のレバノン内戦中に、イスラエルによるレバノン南部侵攻に対抗するために誕生。同じくシーア派が中心となるイランから多額の資金援助や武器提供を受けている。レバノン国内では政党としても活動しており、国軍を上回る軍事力を有し「国家の中の国家」と評される。 |
今週の注目指標
| ベイリー英中銀総裁 講演 4月15日01:05 ☆☆ | 今週は国際通貨基金(IMF)/世界銀行グループ春季大会が米ワシントンDCで開かれており、各国中銀関係者が米国に集まっている。英中銀関係者の発言も複数予定されている。ベイリー総裁は14日にNYのコロンビア大学、15日にワシントンDCの国際金融協会(IIF)総会で講演を行う。英中銀は据え置きを決めた2月の会合が5対4と僅差となったこともあり、イラン紛争前までは4月会合までに利下げを行うとの見方が広がっていた。紛争を受けて期待が後退。全会一致で据え置きとなった3月会合で、物価見通しの引き上げなどが見られ、市場では早ければ4月会合で利上げという見通しが広がった。短期金利市場での4月利上げ見通しは一時80%程度まで上昇したが、ベイリー総裁は「市場は行き過ぎているのではないか」と過度な期待をけん制。直近では利上げ期待が20%程度まで落ち着いてきている。ただ、イランと米国との協議決裂を受けて、紛争の長期化懸念が広がる中で、物価高への警戒感が広がってきており、総裁が今後についてどのような姿勢を示すのかが注目される。英景気の鈍化懸念などを強調するようだと、ポンドは売り圧力が強まる。対ドルで1.32ドル台への下げとなる可能性がある。 |
|---|---|
| ラガルドECB総裁 講演 4月15日06:00 ☆☆ | 国際通貨基金(IMF)/世界銀行グループ春季大会もあり、ECB関係者も多数米国を訪問している。ラガルド総裁は14日にワシントンDCのブレトンウッズ委員会春季サミットで講演を行う。総裁は3月25日に行った講演で、エネルギー価格の高騰を受けた物価高について「(利上げを)ためらって動けなくなることはない」と早期利上げの可能性に言及した。短期金利市場で今月の利上げをほぼ100%織り込む動きとなったが、その後イランと米国・イスラエルの2週間の停戦合意などを受けて20%台まで低下。しかし、週末の協議決裂を受けて50%程度まで再び上昇する展開となっている。こうした状況を受けて総裁がどのような姿勢を示すかが注目される。利上げに向けた姿勢が継続されるようだと、ユーロ高となる可能性。ユーロドルは1.1800ドルに向けた動きが見込まれる。 |
| ウィリアムズNY連銀総裁 講演 4月16日21:35 ☆☆ | 18日から4月28-29日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にしたブラックアウト期間に入ることもあり、今週はFOMC関係者の発言予定も複数予定されている。注目はFOMC副委員長を兼ねるウィリアムズNY連銀総裁。FRBの金融政策の実務を担うという立場もあり、基本的には中立姿勢が目立つ同氏が、物価高への警戒を強く示してくるようだと、FRB内での物価高警戒の姿勢が意識され、ドル高につながる可能性がある。ドル円は160円台回復に向けた動きが強まると見込まれる。 |
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