2026年04月27日号

(2026年04月20日~2026年04月24日)

先週の為替相場

中東情勢受けてドル円は高値圏推移

 先週(4月20日-24日)の外国為替市場は、中東情勢の緊迫化に伴う「有事のドル買い」と、日銀の早期利上げ観測の後退を背景とした「円売り」が加速し、ドル円は159円台を中心とする高値圏での推移となった。17日に報じられたホルムズ海峡封鎖解除による急落は一時的なものにとどまり、再び地政学リスクと原油高が市場を支配。日経平均が史上初の6万円台を記録するなどリスクオンの円売りも重なり、クロス円は軒並み高値を更新する展開となった。

4月20日(月):ホルムズ海峡再封鎖の示唆とドル買い再燃

 東京市場は、米国の対イラン港湾封鎖継続やイラン船舶拿捕の発表を受け、リスク回避のドル買いが先行した。ドル円は先週末の158.60円付近から159.20円まで急騰。ロンドン市場でも原油価格が90ドル付近へ上昇する中でドル買い・円売りが継続した。NY市場ではトランプ大統領が停戦延長の可能性を否定する場面もあったが、介入への警戒感から上値も重く、158円台後半から159円近辺での神経質な動きに終始した。

4月21日(火):情報錯綜と日銀利上げ見送り観測

 21日は情報戦の様相を呈した。東京市場ではイラン代表団派遣の報道で一時小止みとなったが、ロンドン市場でイラン側がこれを否定すると再び「有事のドル買い」が強まった。さらに「日銀が4月会合で利上げを見送る公算」との報道が円売りを加速させ、ドル円は159.26円まで上昇。NY市場では、トランプ大統領が「協議完了まで停戦を延長する」と発表したことで極端な悲観論は後退したが、ドルの底堅さは変わらず159円台半ばで引けた。

4月22日(水):緊張緩和への期待と原油相場の反発

 東京市場では、イラン国連大使による交渉再開への前向きな発言を受け、ドル円は159.11円まで下落。しかし、ロンドン市場で原油先物が91ドル台へ反発すると流れが逆転した。NY市場でも流動的な中東情勢を背景にドル買いが優勢となり、ドル円は一時159.64円を付け、160円の大台を再び射程圏内に捉えた。

4月23日(木):日経平均6万円到達とボラティリティの拡大

 23日は日米の材料が交錯した。東京市場ではイランでの爆発音報道(後に軍事演習と判明)により、ドル円が159.68円まで急騰後に急反落するなど乱高下した。ロンドン市場では原油高に伴う日本の交易条件悪化が意識され、ドル円は159.78円付近まで上昇。NY市場後半には、イラン交渉チームの離脱懸念が報じられる中で米国債利回りが上昇し、ドル円は159円台後半の高値圏を維持した。

4月24日(金):和平協議への期待による週末の調整

 週末を控えた東京市場は、159.62-159.84円の狭いレンジで様子見ムードが強まった。ロンドン市場に入ると、アラグチ・イラン外相(用語説明1)が追加協議のためパキスタンに到着したとの報を受け、有事のドル買いに対する調整売りが優勢に。ドル円は159.32円まで押し戻された。NY市場でも、土曜日に予定される和平協議への期待や、FRBパウエル議長を巡る刑事捜査の取り下げが材料視され、ドル安の流れを継続。ドル円は159円台前半で週の取引を終えた。

今週の見通し

 中東情勢をにらみながらの展開が続くと予想される。米国とイランの協議再開に向けた動きが広がるとドル安が見込まれる一方、ミサイル攻撃などの動きが再開すると、一気に有事のドル買いが強まると見込まれる。核をめぐるイランと米国の主張の溝が深いこともあって、先行きの不透明感が続いている。

 もっともドル円の160円手前が重くなるなど、行き過ぎた動きにも警戒感がある。トランプ大統領が停戦延長を示し、両国が落としどころを探る展開になっていることで、何らかの妥協点が見つかるのではとの期待がドルの上値を抑えている。

 次期FRB議長に関するプロセスが進んでいることも、ドル売りにつながっている。現在のパウエルFRB議長の任期満了が5月15日に迫る中、トランプ大統領が次期議長に指名したウォーシュ氏の上院銀行委員会での承認に反対してきたティリス上院議員(用語説明2)が、承認阻止を撤回する意向を示した。承認手続き進行に反対する理由としてきた、パウエル議長に対するFRB本部の改修工事費をめぐる刑事捜査について、司法省が捜査の打ち切りを決定したことを受けた対応である。上院銀行委員会は29日に新議長承認に向けた採決を行う。その後、上院本会議での承認手続きに移る(FRB議長など大統領指名人事の承認は上院の専管事項)。今後は迅速に手続きが進むと見込まれている。ウォーシュ氏はパウエル議長に比べてハト派色が強いと見込まれており、今後の利下げ期待の拡大から、ドルが重くなる可能性がある。

 なお、今週は28日に日銀金融政策決定会合、29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控えており、週の初めはやや動きにくさがある。木曜日のイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)、ECB理事会も含め、いずれも政策金利は据え置きの見込みで、波乱要素は少ない。だが、声明や会見などで今後の見通しに変化が生じる可能性があるだけに、これらイベント前は様子見ムードとなりやすい。

 ドル円は159円台を中心に次の方向性を探る展開。有事のドル買いに対する警戒感が強い分、一気の下げは難しいが、やや上値の重さが見られるだけに、いったん調整売りが入る可能性があるとみている。ターゲットは158.50円前後。こうした調整売りが、中期的な流れを伴う大きな動きになるかどうかは、中東情勢次第とみている。

 ユーロドルは上値の重さが見られる。1.1800ドル前後が重くなりそうだ。こちらも中東情勢次第で上下ともに動きが出る可能性がある。

 ユーロ円は上昇基調がいったん収まっており、次の流れを探る展開。中東情勢への注目が集まる中、ドル主導の展開が続くと、不安定な動きとなりそうだ。ただ、中長期での上昇基調継続の期待が強く、下がると買いが出る展開か。185.00円近くではユーロ買いが出ると予想される。

用語の解説

アラグチ・イラン外相 アッバース・アラグチ(Abbas Araghchi)イラン外相。1962年イラン・テヘラン生まれ。革命防衛隊出身。1989年に外務省入省。フィンランド大使などを歴任、2007年から2011年まで駐日イラン特命全権大使。ロハニ政権で外務次官、2024年8月より現職。
ティリス上院議員 トム・ティリス(Thomas Roland Tillis)上院議員。ノースカロライナ州選出。現在2期目。世界的な会計・コンサルティングファームであるPwCのパートナーなどを経て現職。上院銀行・住宅・都市問題委員会の主要メンバー。2026年の上院選挙には出馬せず、2027年1月の任期満了をもっての議員引退を表明している。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
4月27・28日
☆☆☆
 27、28日の日銀金融政策決定会合では、当初、利上げの予想が広がっていた。物価高への対応や春闘での賃上げ継続に対する期待感が利上げ期待につながり、円安進行への警戒感もそれを支えていた。短期金利市場の動向から算出される利上げ確率は、4月初旬時点で70%に達し、利上げを織り込む勢いを見せていた。しかし、4月6日の日銀支店長会議や13日の信託大会での植田総裁の挨拶(氷見野副総裁が代読)などで利上げに向けた姿勢が見られず、中東情勢を受けた先行き不透明感などが強調されたことで、今回の利上げは見送るとの見通しが広がった。さらに20日には、複数のメディアが関係者の情報として「今回の追加利上げを見送る公算」と報じた。会合の1週間前に日銀がメディアを通じて市場の期待を誘導するという、従来よく見られる手法であるとの見方が広がったこともあり、今回は据え置きとの見通しが支配的となっている。
 こうした中、今回のポイントは以下の2点となる。
 ひとつは、6月の会合に向けた今後の利上げ姿勢である。短期金利市場における6月会合の利上げ確率は67.5%と、3分の2強に達している。声明や会合後の植田総裁の記者会見で、こうした期待がさらに強まるかどうかが焦点となる。植田総裁が会見で今後の不透明性に言及しつつも、利上げ継続の基本姿勢を強調すれば、円買いが広がる可能性がある。ドル円は158円台に下げる可能性が高い。一方で、先行き不透明感を強く強調し、原油高が物価や経済に与える影響を見極める姿勢を示すようであれば、6月の利上げ期待が後退し、円売りを招く可能性もある。この場合、160円超えを試す可能性が高まる。 
 もう一つのポイントは、今回発表される日銀展望レポートである。中東情勢を受けた原油高の影響により、物価見通しが大幅に引き上げられるとの見方が広がっている。インフレターゲットである2.0%を大きく上回ってくるとの予測となっている。一方、GDP見通しについては、コスト高の影響もあり下方修正が見込まれる。ある程度の修正であれば想定内だが、予想を超えた変更となれば相場への影響は避けられない。また、経済・物価見通しのリスクバランスにも注目される。前回レポートではともに「概ね上下にバランスしている」とされた。今回は、経済見通しに下振れリスク、物価見通しに上振れリスクが高いとする表現に変わる可能性がある。特に物価見通しの上振れリスク拡大は、利上げ期待に直結し円買いにつながる可能性がある。ドル円は157円台に向けた動きも意識される。
米連邦公開市場委員会
4月30日03:00
☆☆☆
 28,29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利であるFF金利を現状の3.50-3.75%で維持する見込みが圧倒的となっている。イラン紛争開始直後は利上げに向けた期待も一部で見られたが、その後ほぼ払拭されている。注目は今後に向けての姿勢を声明などでどう示すかとなる。市場ではウォーシュ次期議長体制に移っても当面の据え置きを見込んでおり、年内の利下げ期待は17%程度となっている。こうした当面の据え置き見通しを支えるような内容が見られるかが注目材料である。また、今回が議長としては最後の会合になる予定のパウエル議長の会見にも注目が集まる。次期体制への言及や、今後の自身の進退などについての発言があるものとみられる。利下げに消極的な発言が目立つようだと、ドル高になる可能性がある。ドル円は160円に向けた動きが見込まれる。
英中銀金融政策会合(MPC)
4月30日20:00
☆☆☆
 4月30日は20時にイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)の結果発表、21時15分に欧州中央銀行(ECB)理事会の結果発表が予定されている。
 30日の英MPCではイラン紛争を受けて一時利上げの期待が強まっていたが、直近は据え置き見通しが広がっており、短期金利市場での見通しは利上げが10%程度、据え置きが90%程度となっている。中東情勢を受けた物価高への警戒感から、前回3月19日の会合前後では今回の利上げ期待が80%近くまで上昇する展開が見られた。しかし、ベイリー総裁が「市場は行き過ぎているのではないか」と過度な期待を牽制する発言を行ったこともあり期待が後退、据え置き見通しが広がった。また、14日に公表されたIMFの2026年英経済成長見通しが+0.8%に下方修正されるなど、厳しい経済状況も利上げ期待を押し下げている。ただ、22日発表の3月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.3%まで上昇し、英中銀が重視するサービス価格CPIも+4.5%まで上昇するなど、英国の物価上昇は顕著になっている。そのため市場では次回6月会合での利上げを73%程度織り込んでいる。こうした状況を、ベイリー総裁がどのように評価するか。また、今回発表される「金融政策報告書」で物価見通しがどのように示されるかが注目される。6月の利上げ期待が強まるようだとポンド高が見込まれる。ポンド円は1ポンド=217円に向けた動きが見込まれる。
 ECB理事会も、イラン紛争を受けて、3月時点では利上げ期待が86%まで強まっていた。紛争は継続しているものの、一時に比べて先行き不透明感が後退したこともあって据え置き期待が広がり、直近では利上げ期待は10%程度にとどまっている。前回3月の会合では、政策金利についての表現が「良い位置(good place)」から「良い態勢(well positioned)」に変更された。これは次の行動(利上げ)に向けての示唆とも捉えられている。今回のラガルド総裁会見などでどのような姿勢が示されるかが注目されるところとなっている。直近では6月の利上げを81%、9月までの2回の利上げを90%程度織り込む状況となっている。こうした市場の期待に対し、当局がどのような距離感を示すかが鍵となる。早期の利上げ期待が強まるようだと、ユーロ高が見込まれる。ユーロ円は188円に向けた動きが予想される。

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