2026年05月07日号
先週の為替相場
2024年7月以来のドル高円安から、一気の下げ
先週(4月27日-5月1日)の外国為替市場は、1ドル=159円台から、3月30日に付けた160.46円を超え、2024年7月以来のドル高円安圏に達したのち、日本の通貨当局によるドル売り介入とみられる急激なドル売り円買いによって155円台まで急落するという、極めてボラティリティの高い展開となった。週末にかけては157円近辺まで値を戻している。
週前半:中銀会合を受けての動き
28日に日銀金融政策決定会合、29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、30日に英中銀金融政策会合(MPC)およびECB理事会の結果発表を控え、週の初めは落ち着いたスタートとなった。
27日の市場では「イランがホルムズ海峡開放に向けた新たな提案を米国に提示」などの報道が、中東進展に向けた期待からのドル売りにつながり、ドル円は159.10円を付ける場面が見られた。ユーロドルも1.1750ドル超えまでユーロ高ドル安となっている。
28日の日銀会合結果発表前に159.57円まで反発。市場予想通り政策金利は据え置きとなったが、投票結果が1月および3月会合での8対1から、6対3へと変化した。これまでの高田委員に加え、タカ派として知られる田村委員の利上げ主張は想定内であったものの、中立派の中川委員までもが利上げ主張に回ったことがサプライズとなり、円買いが強まった。ドル円は4月21日以来となる158円台を付け、ユーロ円も186.80円前後から186.21円を付けるなど、クロス円でも円買いが先行した。その後の植田総裁会見では、物価の上振れリスクが高まる中、「経済の減速が限定的ならば利上げ」との発言もあったが、6月会合については「予断を持っていない」と中立姿勢を強調したことで円売りとなり、会合直後の円買い分を解消した。イラン紛争長期化への警戒感もあり、ドル円は159円台後半を付けている。
週半ば:ドル円は節目の160円超えへ
昭和の日で東京勢が不在となった29日の市場は、落ち着いた動きから海外市場でドル高が強まった。アジア時間に米メディアが報じた「トランプ米大統領の対イラン長期封鎖準備指示」が有事のドル買いを誘った。NY原油の上昇なども相まって、ドル円はこれまで上値を抑えていた160.00円手前の売りをこなして上昇した。
さらに米連邦公開市場委員会(FOMC)がドル買いを誘った。市場予想通りの政策金利据え置きとなったものの、投票結果は予想外の賛成8に対して反対4であった。ミラン理事がこれまで同様に利下げを主張したことに加え、3名の地区連銀総裁が、金利据え置き自体には賛成しつつも「声明での緩和バイアスを削除すべき」と主張。この動きをタカ派シフトとみた市場がドル買いを進めた。また、その後の会見でパウエル議長が、5月15日の議長任期満了後も理事としてFRBに留任することを発表。通例では議長は任期満了とともに理事も退任するため、これがサプライズなドル高材料となった。
2024年以来のドル高圏から一気の急落
30日に入って中東情勢の悪化懸念からドル高がさらに強まった。トランプ大統領による対イラン攻撃再開の検討や、極超音速兵器「ダークイーグル」(用語説明1)の中東派遣観測などが報じられ、地政学リスクが強く意識されると、ドル円は3月30日の高値160.46円を明確に超え、2024年7月以来のドル高圏となる160.72円まで上昇した。ユーロ円も187.45円を付けている。
しかし、高値圏から一気に円買いが広がった。片山財務相が「いよいよ断固たる措置を取るタイミングが近づいている」と強くけん制し、三村財務官も「最後の退避勧告だ」と発言。これらをきっかけに159円台へ下げると、実弾介入とみられるドル売り円買いが断続的に入り、155.57円まで急落した。公式発表はないものの、政府関係者情報として介入実施が報じられている。
安値から反発も第2弾の売り
1日東京朝には買い戻しが入り、米中央軍のクーパー司令官(用語説明2)らが対イランの新たな軍事作戦についてトランプ大統領に説明を行ったとの報道などで157.33円まで反発した。しかし、日本時間夕方に再び大きな売りが出ると、前日安値をわずかに更新する155.50円まで下落。その後は156.60円台まで反発したものの、前日に比べるとドル安の勢いは抑制され、戻りの鈍い展開となった。
今週の見通し
中東情勢警戒と介入警戒から、引き続きボラティリティの激しい展開が見込まれる。4月30日に日本の通貨当局によるドル売り介入と見られる動きが出ると、1日東京午後、4日の昼ごろ、6日の午後と何度も大きな円買いが入った。30日の160円台から155.57円までの急落の後、1日の円買いは155.50円、4日の円買いは155.72円と155円台半ばがしっかりとしたサポートとなって下値を支えると、6日の円買いの前には158.00円近くまで上昇するなど、ドル高の流れが継続。もっとも6日の円買いで155.04円まで下げるなど、介入と見られる動きも継続している。
ドル円はこのあとも相当に不安定な動きを続けそうだ。中東情勢に関しては米国が開始したホルムズ海峡における自由な航行を回復するための作戦であるプロジェクト・フリーダムに対して、イラン側の反発が大きく、軍事衝突が生じるなど、一時警戒感が強まった。しかし、トランプ大統領はイランが米国の提案する合意案を順守するならば作戦を終了する姿勢を示している。また、一部イランメディアがイラン外務省が米国の提案を精査していると報じており、イラン紛争終結に向けた動きが広がっている。
ドル円は介入警戒感と、中東情勢進展期待が上値を抑えるものの、日米金利差などから中長期的にはドル高円安が継続するとの意識もあり、上下ともにやや不安定な状況。連休明けとなる7日以降も日本の通貨当局による介入が続くようだと、円買いの勢いが勝るとみられ、その場合は153円がターゲットとなりそう。
ユーロドルは中東情勢を受けたドル安を支えにしっかりした動きとなっている。ECBの早期利上げ期待もユーロを支えている。6日の市場では1.1800ドル手前の売りが上値を抑えたが、ユーロ高の流れが続くと1.18台乗せに向けた動きが強まると見込まれる。
ユーロ円は対ドルでのユーロ買いと日本の通貨当局による円買い介入の思惑から、不安定な動きが見込まれる。地合いは堅調も、介入が入った場合、ユーロ円でも円高が進むだけに、上値追いには慎重となりそうだ。
用語の解説
| ダークイーグル | ダークイーグル(DarkEagle)は米陸軍が主体となって計画し、ロッキードマーチン社が開発・製造する最新鋭長距離超音速兵器。マッハ5以上で滑空し、1725マイル(約2775KM)以上の射程があるとされているが、詳細は不明。従来の弾道ミサイルと異なり、大気圏内を予測不可能な軌道で滑空するため迎撃が困難とされている。 |
|---|---|
| クーパー司令官 | ブラッド・クーパー(Brad Cooper)提督は、米中央軍司令官。ミサイル駆逐艦や巡洋艦艦長を経て、2021年に第5艦隊司令官、2024年に中央軍副司令官となり、2025年8月より現職。バーレーンを拠点とする第5艦隊司令官として、イエメンのフーシ派による商船攻撃に対し、多国籍部隊を指揮して防衛戦を主導するなど、中東情勢に詳しい。 |
今週の注目指標
| ISM非製造業景気指数(4月) 5月5日23:00 ☆☆☆ | 5日に発表された4月の米ISM非製造業景気指数は53.6と3月の54.0から低下。市場予想の53.7も小幅に下回った。新規受注が60.6から53.5に大幅に低下し、全体を押し下げた。低下幅は4年ぶりの大きさとなった。総合指数の算出には影響しないが、原油価格上昇の影響もあって市場の注目を集めている投入価格は70.7で前回から横ばい。もっとも、こちらは2022年10月以来の高水準での推移となっている。物価高圧力をまともに示す結果となり、ドル買いに寄与した。ただ、ドル円では介入と見られる動きに対する対応、その他通貨では中東情勢への警戒感などが広がっており、影響は限定的なものに留まった。 |
|---|---|
| 米新規失業保険申請件数(4月26日-5月2日) 5月7日21:30 ☆☆☆ | 週ベースの米新規失業保険申請件数は前回予想を大きく下回る18.9万件となった。20万件を割り込むのは今年1月4日からの週以来となる。現在の米国の雇用市場は低採用・低解雇での安定が続いているとみられており、そうした米雇用市場の動向を示す結果となった。今回は20.5万件まで増加が見込まれている。前回同様に予想を下回って低水準に留まった場合、米雇用市場の安定に対する安心感につながり、ドル買いとなる可能性がある。ドル円は157円台を試す動きにつながる可能性がありそう。 |
| 米雇用統計 5月8日21:30 ☆☆☆ | 前回3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+17.8万人と、市場予想の+6.5万人を大きく超える伸びとなった。2月の数字が-9.2万人から-13.3万人に大きく下方修正されているものの、それを加味しても強い伸びである。失業率は4.3%と、市場予想および2月の4.4%から改善した。こうした数字だけを見るとかなりの好結果だが、失業率に関しては、労働参加率が2月の62.0%から61.9%に低下した影響が大きいとみられる。2月に7.9%と7か月ぶりの低水準となった広義の失業率(U6失業率)は、8.0%と小幅に悪化した。 前回の非農業部門雇用者数は、政府部門が-0.8万人と6か月連続の雇用減となったものの、民間部門が18.6万人の大幅な雇用増となった。財部門は+4.3万人。悪天候の影響で2月が-1.3万人となった建設業が、反動もあって+2.6万人と好調となった。製造業は+1.5万人と2か月ぶりのプラス圏となった。その増加幅は2024年11月以来の高水準となる。民間サービス部門は+14.3万人となり、2024年12月以来の高い伸びを見せた。カリフォルニア州の医療従事者による大規模ストライキの影響で、2月分が4年超ぶりにマイナスとなった教育・医療部門は、+9.1万人と大きく増加した。景気に敏感で雇用の流動性も高いとされる小売業、運輸・倉庫業、娯楽・接客業がいずれもしっかり伸びるなど、好印象を与えている。 一方、平均時給は前月比+0.2%、前年比+3.5%となり、市場予想(+0.3%、+3.7%)および2月の実績(+0.4%、+3.8%)を下回った。また平均労働時間も、2月および市場予想の週34.3時間を下回る34.2時間となっている。物価高が警戒される中での賃金の伸び鈍化および労働時間の短縮は、厳しい結果といえる。 これらを受けた4月の米雇用統計だが、非農業部門雇用者数は+6万人と伸びが大きく鈍化する見込みとなっている。ただ、ストライキの反動や天候問題などの特殊要因がないことを考えると、まずまずの伸びという印象である。ダラス連銀が試算しているブレークイーブン雇用(失業率を悪化させないために必要な雇用の伸び)は約3万人となっており、同水準を超えていることも好材料となる。失業率は4.3%で維持、労働参加率は62.0%へ戻る見込みである。前回予想外に悪化した平均時給は前年比+3.8%と改善が見込まれており、総じて堅調な数字が期待される。 予想前後であれば、今月中にも始まるとみられるウォーシュ体制下の新FRBにおいても利下げを急ぐ必要性は見られない。しかし、予想外の弱さを見せた場合には、利下げ期待が一気に強まる可能性がある点には注意が必要となる。予想を大きく下回った場合はドル売りが強まる可能性があり、ドル円は155.00円に向けた動きが見込まれる。 |
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