2026年05月11日号

(2026年05月04日~2026年05月08日)

先週の為替相場

介入の残響と神経質なレンジ形成

 先週(5月4日-5月8日)の外国為替市場でドル円は、4月30日の160円突破から155円台への急落という日本の通貨当局によるドル売り円買い介入とみられる動きもあって、当局の動向に神経質に反応する展開となった。4日や6日にも介入ではないかと見られる大きなドル売り円買いが入っており、市場は警戒感を強める展開となった。

週前半:底堅さと再度の急騰・急落

 日本の祝日(みどりの日)であった4日(月)、東京勢が不在の中でドル円は157円前後でスタートしたが、正午ごろに突如として155.72円まで急落した。公的な発表がなく、介入か、薄商いをついた仕掛け的なドル売りなのかが定かとならない中、市場は警戒感を強めたが、1日の安値155.50円に届かず反発したことで、その後はドル買いが優勢となって、ロンドン市場午前には157円台を回復する動きを見せた。

 5日(火)は概ね157円台前半から中盤での小動きとなった。米長期金利の推移を睨みつつ、じりじりと値を戻す展開となったが、この戻りも長くは続かなかった。

週半ば:6日の「第2波」か、再びの155円割れ

 4日からの週で最も大きな動きを見せたのは6日(水)である。157円台後半で推移していたドル円は、日本時間午後1時ごろに再び猛烈な売りに見舞われ、157.82円から一時155.04円まで急落した。4日の急落は介入ではないとの見方も出ていたが、6日の急落は値動きの急激さや値幅の大きさもあって、介入ではないかとの見方が強く出ていた。157円台後半まで上昇したところで一気にドル売り円買いが入ったことから、158円を明確に超えさせないという当局の強い意志が意識された。心理的な節目である155.00円を割り込めずに反発したことで、ドル円は少し反発も。156円台半ばからが重くなる展開となった。

週後半:沈静化と方向感の模索

 7日(木)から8日(金)にかけては、一転してボラティリティが低下した。介入警戒感から上値は157円が重くなり、一方でドルの底堅さから下値も156円台前半で支えられるという、狭いレンジでの推移が続いた。8日発表の4月米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を超える伸びとなったが、平均時給(用語説明1)の伸びが予想を下回り、発表後はややドル売りとなった。もっとも中東情勢と日本の通貨当局による介入への警戒感が強い中、米指標への反応は限定的なものにとどまった。週末8日は156円台半ば(終値156.67円付近)で取引を終えた。160円を記録した前週に比べれば落ち着きを取り戻したといえるが、依然として介入前の水準からは円高圏に位置している。

今週の見通し

 市場は4月30日と5月6日の急落に関しては、日本の通貨当局によるドル売り円買い介入であるとみなしている。1日及び4日の急落についても介入の可能性があると警戒している。最初の30日の動きはともかく、1日、4日、6日のドル売りはいずれも157円台での動きとなっており、市場では「当局は158円台を許容しない」という見方が広がっている。

 一方で中東情勢はドル買いの材料となっている。米国とイランとの戦闘終結に向けた合意への期待が広がっていたが、イランが10日に仲介国パキスタンを通じて米国に示した回答について、トランプ大統領が受け入れられないと自身のSNSに投稿。ホルムズ海峡の主権や米国の賠償を求める内容で、核施設の放棄も拒否したものと一部で報じられており、米国側としては受け入れがたい内容である。米国とイランの対立がまだ長引くとの見方が広がっており、有事のドル買いが入りやすい地合いとなっている。

 ドル円は156円台から157円台を中心とした推移が見込まれる。158円に迫った時に介入が実施されるかどうかが最大の注目材料となる。ベッセント財務長官(用語説明2)が11-13日の日程で訪日する予定となっており、片山財務相などとの間で投機的な円売り阻止に向けた話し合いがなされ、何らかの形で円安阻止姿勢を市場に示してくるようだと、ドル円は上値が重くなりそうだ。

 大きなターゲットは155.00円。同水準を割り込むと「ここからの円売りは当面難しい」との見方につながりそうである。

 ユーロドルは中東情勢を受けたドル高と、ECBの早期利上げ期待を受けたユーロ高が交錯。1.17ドル台を中心とした推移が続くとみられる。地合いは堅調となっているが、1.18ドル台を積極的に買い上げる勢いは見られない。

 ユーロ円は対ドルでのユーロ買いもあり、地合いは堅調となっているが、ドル売り円買い介入が入った場合、ユーロ円でも円高が進む可能性が高いだけに、上値追いには慎重となりそうだ。185円前後で売りが出ており、同水準を超えて185.50円を付けるような展開が見られると、上昇に弾みがつく可能性がある。

用語の解説

平均時給 非農業部門の民間部門で雇用されている労働者の1時間当たり受け取った賃金の平均。米雇用統計には事業所調査と家計調査があるが、このうち事業所調査で集計される支払賃金総額を総労働時間で割ったものとなる。支払賃金総額のため、残業代や深夜・休日手当、有給休暇などでの賃金支払いなども含まれる。一方、福利厚生費、現物給与(食事や家賃補助など)、過去の未払い分の支払いなどは入らない。
ベッセント財務長官 スコット・ベッセント(Scott Bessent)第79代米財務長官。イェール大学卒。ブラウンブラザーズハリマン(BBH)、オライヤングループなどを経て、1991年から2000年までソロスファンドマネージメントに勤務。自身のヘッジファンド運営などを経て、2011年から2015年まで再びソロスファンドマネージメントに戻り、同ファンドの最高投資責任者(CIO)に就任。2015年に自身のヘッジファンド「キースクウェア・グループ」を設立した。2025年1月より現職。

今週の注目指標

ベッセント財務長官、片山財務相らと会談
5月12日
☆☆☆
 ベッセント財務長官は14日から北京で行われる米中首脳会談を前に、11日から13日の日程で訪日し、12日に高市首相、片山財務大臣、植田日銀総裁とそれぞれ会談を行う予定である。片山財務相とは、ゴールデンウィーク中に行われたとみられるドル売り円買い介入についての評価や、今後の両国の為替政策における連携の確認などが行われる見通しだ。投機的な動きによるドル高円安阻止の姿勢が明確に示されれば、ドル売り材料となる可能性がある。ドル円は155円台へ向けた動きが見込まれる。
米消費者物価指数(CPI)(4月)
5月12日21:30
☆☆☆
 3月の米CPIは前年比+3.3%となり、2月の+2.4%から一気に伸びが加速、2024年5月以来の高い伸びとなった。前月比は+0.9%で、2月の+0.3%からこちらも急加速し、2022年6月以来の高水準となっている。イラン情勢を受けた原油高が影響しており、食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+2.6%と2月の+2.5%から小幅な伸びにとどまった。前月比は+0.2%で2月と同水準の伸びであった。原油高は製造・流通コストの上昇を招き、全体的な物価上昇圧力につながるが、3月時点ではエネルギー価格そのもの以外への波及は限定的な状況が見られた。なお、前年比は総合、コアともに予想を僅かに下回った。
 3月のCPI前年比の内訳を確認すると、原油高を受けたガソリン価格の上昇が顕著である。2月の前年比-5.6%から+18.9%へと一気に上昇した。電気料金が前年比+4.6%、ガス料金が+6.4%とエネルギーサービスも高く、エネルギー価格全体では+0.5%から+12.5%へ急加速した。食品はエネルギー価格上昇の影響を受けやすい野菜などの価格が一部上昇したが、全体としては+2.7%と2月の+3.1%から鈍化している。コアCPIは財部門が+1.2%と水準的には落ち着いているものの、2月の+1.0%から小幅に伸びが強まった。中古車が2月と同水準の-3.2%となり、3か月連続のマイナスで全体を押し下げている。新車価格も2月と同じ+0.5%と落ち着いている。一方、高く出たのはアパレルの+3.4%(2月は+2.5%)、コンピューター関連の+2.2%(2月は+0.9%)などである。サービス部門は+3.0%と2月の+2.9%から小幅に伸びが強まった。最大項目の住居費が1月、2月と同じ+3.0%となったほか、医療サービスが+3.7%と2月の4.1%から鈍化した。一方で、航空運賃が+14.9%(2月+7.1%)に跳ね上がり、輸送サービス全体を+4.1%(2月+2.2%)へと押し上げた。
 4月のCPI予測だが、ガソリン価格の上昇傾向が継続しており、全体を押し上げる見通しだ。EIAによるガソリン小売価格は、4月終盤に向けて上昇が加速。月間ベースでは前月比12.3%の大幅上昇、前年比では+28.4%へと大幅に伸びが加速している。市場予想は前年比+3.8%と、3月から大きく加速する見込みである。予想以上に全体の伸びが強かったり、コアが上振れした場合は、米利下げ期待の後退からドル高が再燃し、ドル円は158円へ向けた動きが見込まれる。
米小売売上高(4月)
5月14日21:30
☆☆☆
 前回3月の米小売売上高は、前月比+1.7%と2025年3月以来の伸びとなり、市場予想(+1.4%)を上回った。自動車を除く小売売上高は+1.9%であった。ガソリン価格の上昇を受けてガソリンスタンド売上が前月比+15.5%と大幅増になったほか、家具(+2.2%)、総合小売り(+1.0%)、電気製品(+0.9%)と幅広く買われている。物価高を背景とした消費の前倒しなどが意識されている状況だ。
 今回の予想は前月比+0.5%、自動車を除くベースで+0.7%となっている。ガソリン価格の上昇が4月も継続しており、全体を支えると期待されている。予想を超える伸びを見せれば、米個人消費の堅調さへの安心感からドル高につながる可能性が高い。その場合、ドル円は158円がターゲットとなる。

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