2026年05月25日号

(2026年05月18日~2026年05月22日)

先週の為替相場

159円台突入と地政学・米利上げ再燃が交錯する高値圏の攻防

 先週(5月18日–5月22日)の外国為替市場でドル円は、米国の高金利長期化観測(利上げ再燃リスク)や日本の財政赤字懸念といった強力なファンダメンタルズ要因が下支えとなる一方、緊迫化する中東(米・イラン)情勢や原油価格の乱高下に神経質に振り回される展開となった。心理的節目である159円台に乗せたことで日米当局による為替介入・牽制への警戒感が最高潮に達し、海外時間の深夜から早朝にかけて突発的な急落を何度も挟んだものの、底流にあるドル買い実需は崩れず、週末には159円台前半の高値圏を維持して取引を終えた。

 週前半:財政赤字懸念の円売りと中東報道による乱高下

 18日(月)から19日(火)にかけては、米金利上昇と国内の政治動向がドル高・円安を牽引した。18日の東京市場では、強い米物価統計を受けた米長期金利の上昇(10年債利回り4.63%台)を背景に、ドル円は朝方の158.54円から159.07円まで上昇。高市首相による補正予算案の前倒し示唆が日本の財政赤字 (国債増発 )懸念を強め、格好の円売り材料となった。

 19日(火)のロンドン市場では、トランプ米大統領の「イラン攻撃見送りは短期間」とのSNS発言から有事のドル買いと原油高(NY原油109ドル台)が再燃し、一時159.18円まで上値を伸ばした。しかし同日のNY市場では、片山財務相の牽制やベッセント米財務長官の「過剰な為替変動は望ましくない」との発言を受けて覆面介入警戒が一気に高まり、21:00には158.67円まで約50銭幅の急落を記録。それでも、米30年債利回りが2007年以来の高水準へ上昇したことで下値は強固に支えられた。

 週半ば:介入警戒下の押し目買いとFOMC議事要旨のタカ派姿勢

 20日(水)から21日(木)にかけては、地政学リスクの緩和期待とタカ派的な米金融政策の綱引きとなった。20日の東京市場では前日の財務相発言による介入警戒から158.82円まで調整が入った。同日のNY市場では、トランプ氏の「米イラン協議が最終段階」との発言によるドル売りと、インフレ上振れ時の追加利上げ検討を示唆したタカ派的なFOMC議事要旨(用語説明1)が交錯し、高値圏での揉み合いに終始した。

 21日(木)の東京市場では、日経平均株価が2000円超急騰するリスクオンの株高を背景に円売りが再燃し、再び159.05円まで上昇。日銀の小枝審議委員が早期利上げに前向きな姿勢を示したものの、織り込み済みとしてスルーされた。その後、ロンドン市場では「イランの濃縮ウラン国内保持」報道などを巡り原油価格が96ドル〜100ドル台を激しく乱高下。これに伴いドル円も一時158.60円まで急落した後に159.14円へ急反発するなど、神経質な「往って来い」の展開となった。

 週後半:利上げ警戒の再燃とウォーシュFRB新議長就任

 22日(金)は欧米の3連休を控えた様子見ムードが広がる中、底堅い値動きが続いた。ロンドン市場ではNY原油先物が再び99ドル台へ反発したことでインフレ警戒のドル買いが継続。NY市場では、ウォラーFRB理事が「利下げと同等に利上げの可能性も明確に示すべき」と踏み込んだタカ派発言を行ったことでドル買い圧力がさらに強まった。

 また、ホワイトハウスではウォーシュFRB新議長の就任宣誓式が行われ、トランプ大統領が「自分のやり方でやるべきだ」とスピーチし、金利に対する大統領の強い期待が浮き彫りとなった。ドル円は週末のポジション調整をこなしつつ、週末23日(土)の早朝にかけて159.20円付近(週高値159.21円)の最高値圏を維持してクローズ。159円台定着への足がかりを確固たるものにして一週間の取引を終えた。

今週の見通し

 中東情勢をにらみながらの展開が続く。トランプ大統領は23日にイランとの和平合意について「ほぼまとまった」と自身のSNS(Truth Social)(用語説明2)に投稿。しかし24日には「時間は我々の味方だ」「代表団には急いで合意するなと指示している」と発言している。市場は米国とイランの和平協議が進展していると期待しており、週明けにドル安原油安株高が進む展開となった。

 もっともイランの革命防衛隊系ファルス通信は合意がほぼ最終段階にあるとのトランプ大統領発言について「現実と一致しない」と否定的な姿勢を示しており、先行きの不透明感が継続している。週明けのドル売りは限定的なものにとどまっており、具体的な進展が期待されている。

 先週一時警戒感が強まった米軍の攻撃再開などの可能性が後退しているとみられており、ドル買いには少し慎重な姿勢が見られるが、先行き不透明感がドル売りを抑える形となっており、大きな動きが出てこない限りはレンジ取引が続くと見られる。

 ドル円は158円台半ばから159円台前半の狭い範囲でのレンジ取引を中心に、次の方向性を見極める展開となりそう。158.00円を割り込んでくるとドル売り円買いに弾みがつく可能性があるが、何らかのドル売り材料が欲しいところ。

 ユーロドルは1.1600ドルを挟んでの推移が続いている。1.1700ドル手前にはユーロ売り注文が入っているとみられる一方、1.15ドル台でのユーロ売りには勢いが見られず、上下ともに動きにくい展開が続く。こちらも基本的には中東情勢の進展待ちとなる。5月前半の1.1800ドル手前までのユーロ高トライから、一転してユーロ安ドル高が優勢となったが、1.15ドル台後半でしっかりと下値が止められた形となっており、1.1675/1.1700ドルの上値抵抗水準を超えると、もう一段の上昇となる可能性がありそうだ。

 ユーロ円は株高もあってしっかりした動きが続いている。ただ、ドル円が158.00円を割り込むような動きを見せると、流れが一変する可能性がある点に注意したい。基本的にはドル主導での展開が目立っており、やや不安定な動きとなりそうだ。

用語の解説

FOMC議事要旨 FOMC議事要旨(FOMC Minutes)は、米国の金融政策を決定する会合「米連邦公開市場委員会(FOMC)」の議論内容を記録した公式文書。会合が終了した約3週間後に公開される。政策金利などの決定に至るまでの具体的な議論のプロセス、参加メンバーの経済やインフレに対する認識、今後の金融政策へのスタンス(利上げ・利下げの方向性など)が詳しく記されている。会合直後の声明文だけでは分からない「各委員の意見の割れ具合(温度感)」や「今後の政策方針のヒント」が読み取れるため、市場で注目されている。
Truth
Social
Truth Social(トゥルース・ソーシャル)は、ドナルド・トランプ氏が立ち上げたソーシャルメディア(SNS)。2021年の米連邦議会議事堂襲撃事件後、Twitter(現X)やFacebookなどの大手SNSからアカウントを凍結されたトランプ氏が、自らの発信の場を確保するために2022年に開設した。「言論の自由の保護」や「政治的差別への対抗」を掲げており、画面の構成や機能は旧Twitterに酷似している。主にトランプ氏の支持者層が集まるプラットフォームとなっており、大統領となった現在も、重要な政策方針や公式声明を世界へ直接発信する最優先のツールとして強い影響力を持っている。

今週の注目指標

NZ中銀政策金利
5月27日11:00
☆☆☆
 27日にニュージーランド準備銀行(RBNZ/中央銀行)金融政策会合の結果が発表される。政策金利は現行の+2.25%での維持予想が大勢となっている。市場予想通り2会合連続での据え置きを決めた前回4月8日の会合では、声明で「今回の据え置き決定は、中期的なインフレ上昇リスクに先手を打って対応することによる潜在的な利益と、経済回復を不必要に抑制することによるコストとのバランスを取ったものとなる」と述べている。また、同時に発表された議事要旨において、当局者らは先手を打って対応することで、いかにインフレ期待の上昇リスクを回避し、二次的な物価上昇圧力を抑制できるかについて議論したことが示されている。かなりタカ派な印象を与える据え置き決定となった。
 前回のこうしたタカ派な姿勢を受けて、今回の会合では20%程度の利上げ確率が織り込まれている。年内に関しては3回の利上げをほぼ完全に織り込んでいる。今回の会合で金利が据え置かれたとしても、声明や、今回発表される四半期に一度の金融政策ステートメント (MPS )における経済見通しでタカ派姿勢が示されるかが注目される。今後の積極的な利上げが期待される内容が示されると、NZドル円は95円を目指す可能性がある。
米PCE価格指数(4月)
5月28日21:30
☆☆☆
 28日に米国のインフレターゲット対象指標である4月のPCE(個人消費支出)価格指数が発表される。市場予想は前年比+3.9%(前回+3.5%)、コアPCEは前年比+3.3%(前回+3.2%)と、さらなる伸びの加速が見込まれている。先行して発表された4月の消費者物価指数(CPI)や、市場予想を大きく上回った生産者物価指数(PPI)、輸出入物価などの関連指標はいずれも一気に加速しており、今回のPCEの大幅な伸び予想とも整合的である。PPIの内訳では、航空運賃や前年比でのポートフォリオ管理費の顕著な伸びが確認されている。ただし、PCEの算出ウェイトはCPIと異なる点に注意が必要である。PCEは、今回CPIを押し上げる要因となった住居費の占める割合がCPIの半分程度にとどまり、逆に医療関連の割合がかなり大きい。そのため、結果が予想ほど高い伸びにならない可能性もある。仮に予想をしっかりと下回った場合は、年内の利上げ観測が後退し、為替市場でドル売りが優勢となる可能性がある。ドル円は158.00円に向けた動きが見込まれる。
財務省外国為替平衡操作の実施状況
5月29日19:00
☆☆
 4月30日に日本の通貨当局による大規模なドル売り円買い介入が入ったと見込まれ、その後も5月1日、6日に介入がほぼ確実視されるドル売りが入り、4日、5日などにも介入ではと噂されるドル売りが入る展開となった。介入を決定する財務省は、公式には介入の実施について明らかにしていない。そうした中、4月28日-5月27日までの間に介入を行ったかどうかの実績を示す外国為替平衡操作の実施状況が公表される。今回の公表では期間中の総額だけとなり、何日にどれだけの介入を行ったかは、四半期ごとのデータが公表されるまで待つ必要がある。4-6月期の発表は8月になる。今回は総額で最大10兆円規模ではなかったかと予想されている。予想に比べて相当に小さかった場合、当局の円安警戒感が大きくないとの見方につながり、円売りが広がる可能性がある。ドル円は161円に向けた動きが見込まれる。

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