2026年06月22日号

(2026年06月15日~2026年06月19日)

先週の為替相場

地政学リスク緩和のドル安と日銀利上げ通過の円安、週後半はFOMCタカ派サプライズで161円台後半へ急伸

 先週(6月15日–6月19日)の外国為替市場でドル円は、前半に中東の和平合意報道を受けた地政学リスクの後退や日銀の金融政策決定会合をこなして160円台前半での揉み合いが続いた後、週後半の米FOMC(連邦公開市場委員会)でのタカ派サプライズを契機にドル高・円安が一気に加速。一時161円台後半まで上値を伸ばし、歴史的な円安水準を一段と更新する激しい値動きの一週間となった。週前半は、トランプ大統領による米国・イラン間の戦闘終結に向けた覚書合意の発表により、有事のドル買いが巻き戻されて一時159.74円まで急落する場面があった。しかし、和平を好感した日経平均株価の急伸(史上初めて7万円の大台突破)を背景にリスク選好の円売りが勝り、160円台へ急速に買い戻された。16日の日銀決定会合では1.00%への利上げが決定されたものの、市場の想定内かつハト派的な内容と受け止められて円買いは一時的となった。相場の潮目が完全にドル高へと傾いたのは17日の米FOMCである。政策金利見通し(ドットプロット)で年内現状維持が多数派になるとの市場予想に反し、年内1回の利上げ見通しが中央値となった。また、インフレ見通しの大幅な上方修正などタカ派な結果となったことでドルが全面高となり、ドル円は160.80円へ急伸。勢いは衰えず、18日のNY市場では介入警戒感を押し切る形で161.00円を突破し、一時161円台後半へと一気に急伸した。週末は米祝日(ジューンティーンス)(用語説明1)に伴う休場を前に薄商いとなる中、米イラン協議中止の報道によるドル買い戻しなども入り、161.40円近辺の高値圏を維持して一週間の取引を終えた。

週前半:地政学リスク緩和による株高・円安と、日銀利上げ通過(15日〜16日)

 15日(月)の東京市場は、トランプ大統領による米国・イラン間の戦闘終結に向けた覚書合意の発表やパキスタン首相、イランメディアによる報道を受け、朝方にドルが全面安となり、ドル円は160.20円台から159.74円まで急落した。しかし、和平合意を好感した株高・原油安からリスク選好での円売りが広がり、日経平均株価が3000円を超える急伸を記録すると、午前中に160.20円台を付けて、朝の下げ分を完全に解消した。ロンドン市場では一時160.00円の大規模オプションに絡んだ攻防で膠着したものの、実需による外貨買いなどが下支えとなった。NY市場でも米経済の底堅さを背景とした米金利の高止まりがドル円を支える一方、翌日の日銀決定会合を前に上値を抑えられる構図が続き、160円台を維持した。

 16日(火)の東京市場では、注目された日銀金融政策決定会合において、4会合ぶりとなる政策金利1.00%への利上げと、2027年4月以降の国債買い入れ減額停止が決定された。これらは総じて市場の想定内であり、日経平均株価がザラ場で史上初めて7万円の大台を突破したこともリスク選好の円売りを促した。ロンドン時間には、独ZEW景況感指数が予想を大きく上回ったことでユーロ買いが強まりドル安が進行したが、ドル円は日銀通過後の円売りが下値を支え、ドル安と円安が相殺し合う形で160.30円付近の底堅い推移を維持。NY市場では、内田副総裁の会見が「金融環境は依然として緩和的」とのハト派的な内容と受け止められたことから、ドル円は160円台半ばへと値を切り上げた。

週半ば:FOMC前の緊迫した膠着と、夜半のタカ派サプライズによるドル急伸(17日)

 17日(水)の東京市場は、夜に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を前に市場は完全に様子見ムードとなり、原油価格の下落に伴うドル高の調整などからドル安円高が進行したものの、ドル円は160.26円から160.46円のわずか20銭程度の非常に狭いレンジでの推移にとどまった。ロンドン市場でも中東での地政学的リスクの再燃(イランの対抗措置警告)による原油反発など突発的な動きはあったものの、イベント待ちの膠着した展開が続いた。

 相場の潮目が激変したのは、NY市場午後のFOMC結果発表である。今回のFOMCは想定以上にタカ派な印象となり、金利見通し(ドットプロット)では、見通しを示した18名の委員(用語説明2)の半数にあたる9名が年末までに1回以上の利上げを予想。インフレ見通しも大幅に上方修正され、声明文から緩和バイアスが削除された。さらに、トランプ大統領が利上げの可能性について「起こり得る」と言及したこともドル高を後押しした。この強烈なドル高サプライズにより、ドル円は海外市場で一気に160.80円近辺まで急上昇し、直近高値を塗り替えた。一方、ユーロやポンドは対ドルで急落を余儀なくされ、主要なサポートラインを下放れる展開となった。

週後半:161円台突破の歴史的急伸と、介入警戒下の激しい乱高下(18日〜19日)

 18日(木)の東京市場では、前晩のFOMC後のドル高の流れを引き継ぎつつも、日本の通貨当局による為替介入への警戒感から上値が抑えられた一方、下がると買いが入る底堅さを見せ、160.53〜160.75円の狭いレンジで推移した。その後、海外市場に入るとドル高の流れに円安が加わる形で相場が加速し、心理的節目とされた161円を上放れると一時161円台後半まで急伸。162円の介入ポイントに迫る歴史的な円安水準を記録した。3連休を控えた薄商いの中で終盤にまとまった売りが入り、瞬間的に160.00円台後半まで急落するなど神経質な展開も見られたが、高値圏での推移を維持した。

 19日(金)の東京市場では、米国、中国、香港市場が祝日ということでの薄商いや介入警戒感から160.99円まで下押ししたものの、午後に入ると米イラン協議中止の報道を受けて有事のドル買いが再燃し、当日の高値となる161.46円まで急反発した。ロンドン市場では片山財務相による円安牽制発言で一時的に円高に振れる場面もあったが、米・イラン協議中止に伴う原油高やドル買い意識が根強く、161.40円台へと押し戻された。NY市場が奴隷解放記念日(ジューンティーンス)で休場となる中、為替市場は手がかり難から前日終値付近での揉み合いに落ち着いたものの、根強いドル買い・円安トレンドの底堅さを残したまま、高値圏を維持して一週間の取引を終えた。

今週の見通し

 今週も中東情勢をにらみながらの展開が続くとみられる。先週、米国とイランは戦争終結に向けた覚書(MOU)に署名。ホルムズ海峡の開放などによる原油安・株高の動きが広がった。しかし、イスラエルとレバノンの民兵組織ヒズボラとの戦闘が継続していることを受けて、イランの革命防衛隊はイスラエルと米国による暫定和平合意違反を理由にホルムズ海峡の再封鎖を表明。米国側は「イランが海峡をコントロールしているわけではなく、封鎖はされていない」と否定するなど、両国間の緊張が見られる状況となっている。こうした中、21日から22日未明にかけてスイスで行われた両国と仲介国による協議では、60日以内の最終合意に向けた行程表(ロードマップ)で合意するなど前向きな動きもみられる。今後も中東情勢を神経質に見極める展開が見込まれる。

 ドル円は有事のドル買いに加え、株高を受けたリスク選好の円売り、日米金利差拡大を意識したドル買い・円売りなどが支えとなり、堅調な地合いが見込まれる。週明けも8日続伸となる1103円高と大幅高となった日経平均株価の地合いが、さらなる円売りを誘っている。また、先週の米FOMCでのタカ派姿勢から、年内の追加利上げ期待がほぼ織り込まれる状況になっているだけでなく、年内複数回の利上げを見込む動きも広がっている。一方で、先週に4会合ぶりの利上げを行った日銀は、次回の利上げが早くても10月とみられており、日米金利差を狙った取引が継続しそうだ。

 もっとも、2024年7月に付けた161.95円の直近最高値を前に、日本の通貨当局によるドル売り・円買い介入への警戒感が高まっており、ドル円の上値を抑えている。中東情勢を受けた有事のドル買いによるドル全面高の局面では、ドル売り介入の効果が抑えられやすいが、日米金利差などを狙った円売りが主導する展開であれば介入効果も高くなる可能性があるだけに、上値追いには少し慎重になっている。

 この後はドル高・円安基調を意識しつつ、162円台に乗せるまではじっくりとした動きが見込まれる。1986年以来となる162円台にしっかり乗せるようであれば、ポジション整理のドル買いなどを巻き込みつつ上昇が加速する可能性がある点には注意したい。

 ユーロドルはドル高の流れを受けて上値が重くなっている。もっとも、11日に約2年9か月ぶりの利上げに踏み切ったECBは物価高への警戒を継続しており、次回7月の会合は据え置きが濃厚であるものの、それ以降は利上げ期待が高まる状況となっている。それだけに、現水準近くからのユーロ売り・ドル買いには少し慎重な見方も根強い。1.1500-1.1550ドルが重くなるともう一段の下値トライが期待されるが、動きは緩慢となりそうだ。

 ユーロ円はドル主導でやや不安定な動きが見込まれる。ドル円は底堅いものの、ユーロ円は対ドルでのユーロ売りも重荷となり、上値が重くなりそうだ。185.00円を中心とした上下1円レンジを基本に、方向性を探る展開を見込んでいる。

用語の解説

ジューンティーンス  米国の奴隷解放記念日である6月19日。6月(ジューン)と19日(ナインティーンス)を組み合わせた造語。南北戦争終結直後にテキサス州で北軍将軍が黒人奴隷に解放を告げた日で、事実上の奴隷制の終結日として、一部の州などで祝われていたものが、2021年に連邦祝日として指定された。
見通しを示した18名の委員 FOMCに参加する委員は、議長、副議長を含む理事7名と、12の地区連銀総裁からなる19名。そのうち投票権があるのは7名の理事全員と、12名の地区連銀総裁のうち、FOMC副委員長を兼ねるNY連銀総裁と、持ち回りで投票権を持つ残り11名の中の4名による12名となる。ドットプロットや経済見通しに関しては19名全員が示すことが慣例となっていたが、ウォーシュ新議長は今後の決定に影響が残るとして見通しの発表自体に否定的で、議長として初の参加となる今回のFOMCで、ドットプロットなどでの見通しの発表を拒否している。また、今後の存続を含めたあり方について、ワーキンググループを作って検討するとしている。

今週の注目指標

豪消費者物価指数(CPI)(5月)
6月24日10:30
☆☆
 16日の豪準備銀行(中央銀行)金融政策会合は、4会合ぶりに政策金利を据え置いた。豪中銀はインフレ率は依然として高すぎるとし、押し下げるために必要‌であれば、政策金利のさらなる引き上げを含め、あらゆる手段を講じると表明した。もっとも6月会合では利上げを検討していないとしたこともあり、今後の利上げ期待は限定的となっている。短期金利市場では次回8月会合での利上げを32%、年内の利上げを65%程度と見込んでおり、年内据え置き見通しも35%程度残るなど、見通しが分かれている。
 こうした中、今後の利上げ期待に影響する物価動向への注目度が高い。豪消費物価指数は米国とイランとの紛争前の2月時点で前年比+3.7%、トリム平均が+3.3%となっており、インフレターゲットである2-3%を上回っていた。中東情勢を受けた原油高に3月は4.6%まで上昇。4月は4.2%まで一気に鈍化したが、今回は4.3%への上昇が見込まれている。トリム平均は4月に+3.4%まで上昇、今回は+3.5%とさらに上昇が見込まれるなど、物価高が進んでいる。予想を超えて上昇を見せると、次回の利上げ見通しが高まり、豪ドル高となる可能性がある。豪ドル円は1豪ドル=114.00円に向けた動きが見込まれる。
米PCE価格指数(5月)
6月25日21:30
☆☆☆
 先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)は市場予想通り政策金利を3.50-3.75%で据え置いた。最新の経済見通し(SEP)では、2026年末時点での経済成長見通しの下方修正、失業率見通しの小幅改善、物価見通しの大幅上方修正が示された。また注目度の高いドットチャートでは2026年末時点で18名(ウォーシュ議長はドットチャートで見通しを示さず)中、半数の9名が利上げ見通しを示し、そのうち5名は複数回の利上げ見通しを示している。市場予想は年内現状維持が多数派になると見込んでいたため、予想外にタカ派との印象からドル高が強まった。
 こうした状況を受けて次回7月のFOMCでの利上げ見通しはFOMC前の10%程度から42%まで強まり、年内は1回の利上げをほぼ完全に織り込み、2回の利上げ見通しが70%程度あるという状況となっている。
 利上げ実施のカギを握る物価動向について、25日に米国のインフレターゲットの対象である5月のPCE価格指数が発表される。10日に発表された5月の消費者物価指数(CPI)は前年比+4.2%、食品とエネルギーを除いたコア前年比は+2.9%と、市場予想通りながら4月から伸びた。11日に発表された5月の生産者物価指数は前年比+6.5%と予想を上回り、2022年11月以来の高い伸びとなり、一方でコア前年比は+4.9%と予想の+5.4%を下回って、4月と同水準(速報の+5.2%から+4.9%に下方修正)となった。また、PPIのうちPCEの算出に利用される部分をみると、ポートフォリオ管理費が+23.3%と高い伸び、入院費、ホスピスケアなど医療関係も高い伸びとなっている。航空運賃は前月比でマイナスとなったが、前年比では昨年4月から5月にかけての落ち込みが大きかったこともあり、+17.8%と4月以上に伸びている。
 こうした状況を受けた今回の予想は前年比+4.1%、コア前年比+3.4%とともに前回から伸びが強まる見込み。CPIに比べて全体に占めるウェイトの大きい医療関係の伸びがCPI、PPIともに大きいこともあり、予想を超える伸びとなる可能性もありそう。利上げ期待が強まり、7月の利上げ期待が過半数を超えてくるようだと、ドル高が一気に強まる可能性がある。ドル円は2024年7月に付けた161.95円超えが視野に入る。
東京都区部消費者物価指数(生鮮除くコア/前年比)(6月)
6月26日08:30
☆☆
 先週19日に5月分が発表された日本の全国消費者物価指数の先行指標となる同指標。東京都が昨年9月から実施している第1子の保育料無償化などの影響で水準的には全国CPIよりも低く出ており、5月分は全国CPIの+1.4%に対して、+1.3%となった(ともに生鮮食品除く・前年比)。今回の予想は+1.6%と伸びが強まる見込みとなっている。水準はともかく変化傾向は似ているため、東京CPIの伸び加速は全国CPIの伸び加速見込みにつながり、早期の追加利上げ期待が高まる可能性がある。予想を超える伸びを示した場合、円買いが広がり、ドル円は160.00円に向けた動きとなる可能性がある。

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