2026年07月06日号
先週の為替相場
歴史的な162円台後半への急騰と、不意打ち介入警戒・米雇用統計悪化による乱高下
先週(6月29日–7月3日)の外国為替市場でドル円は、日米の構造的な金利差や実需の買いを背景に、1986年12月以来約40年ぶりとなる162.84円まで上値を伸ばした。しかし週後半には、政府・日銀による「不意打ち介入」への警戒感を高める報道や、週末の米雇用統計の大幅な減速を受けたドル売りが直撃。一時160.49円まで急落するなど、市場は介入臨戦態勢のなかで極めて激しい乱高下を演じる一週間となった。
週前半(29日-30日): 約40年ぶりの162円台突入と、日銀利上げ期待の後退
29日(月)の東京市場は、米利上げ期待が下支えする一方、為替介入への強い警戒感から上値も抑えられ、161円台後半を中心に方向感の乏しいもみ合いに終始した。しかし海外時間にかけては根強い円安圧力が勝り、ドル円は162円台を目前に控えた高値圏を維持して取引を終えた。
30日(火)に入ると円売りが加速。仲値にかけて実需のドル買い・円売り需要が高まると、ストップロス注文を巻き込みながら1986年12月以来となる162円台の大台を突破、一時162.40円まで急伸した。政府が経済財政諮問会議で発表した骨太の方針2026(用語説明1)原案を受けて日銀の早期利上げ期待が後退したことや、日経平均株価が一時1,000円を超える大幅高となったことがリスク選好の円売りを促した。ロンドン市場では浅田・日銀審議委員によるハト派的な発言も円の重石となり、ニューヨーク市場では一時162.65円付近まで上値を広げた。
週半ば(1日-2日): 162.84円の最高値到達と、「不意打ち介入」報道による急落
1日(水)の東京市場でドル円はさらに上値を追い、昼過ぎには162.84円の歴史的な高値を記録した。ベッセント米財務長官が強い米雇用統計の結果を示唆したことがドル買いを誘引した。その後、三村財務官による強い円安牽制発言や、ニューヨーク市場でのFRBウォーシュ議長による「インフレリスク低下」への言及をきっかけに一時162.30円付近へ下落する場面もあったが、依然として高値圏での神経質な推移が続いた。
しかし2日(木)に相場は急変する。東京午後、財務省が今後の円買い介入において「事前にサインを送らず不意打ちで実施する可能性がある」との一部報道が伝わると、市場の円売りポジションの整理が一気に進み、ドル円は160円台へ急落した。さらに21時半の6月米雇用統計で、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を大きく下回る弱い結果になったことも、ドル売りにつながり、ドル円は160.64円を付けた。ベッセント財務長官が30日に強い雇用統計に言及していたことで、サプライズ感が強くなったことや、3日の米国市場が休場(独立記念日の振替休日)で、流動性が低下する中で介入が実施された場合、大きな動きにつながるとの警戒感がドル円の急落を招いた。
週後半(3日): 週末・薄商いの中での神経質な揉み合い
3日(金)の東京市場は、前日の急落の反動から朝方に一時161.52円まで買い戻された。しかし、米早期利上げ期待の後退を背景に上値は重く、日中は161.20円前後での揉み合いに終始した。ロンドン市場の朝方には、薄商いの中で円買いフローが持ち込まれ、一時160.49円まで急落する突発的な動きを見せたものの、売り一巡後は急速に買い戻され、161円台前半へと押し戻された。その後、ニューヨーク市場は独立記念日の振替休日のため休場となり、週末を控えた薄商いのなか、政府・日銀による為替介入への強い警戒感を残したまま一週間の取引を終えた。
今週の見通し
先週木曜日の米雇用統計のサプライズな弱さを受けて、米国の利上げ期待が後退している。今月の米FOMCでの利上げ期待は、米雇用統計前の30%前後から20%前後へ低下。年内の利上げについては、1回か2回かで見通しが拮抗している状況から、2回の見通しが20%程度とかなり少数派になるところまで低下している。こうした米金融政策に対する見通しの変化がドル売りを誘っている。
一方、日銀の利上げ期待も後退している。30日に政府が示した骨太の方針2026では、日銀に対して「安定的な物価上昇の実現に資する適切な金融政策運営を伴うことが非常に重要」と示した。非常に重要との表現が日銀の利上げを強くけん制しているものとの見方が広がっている。これにより日銀の利上げ期待も後退。市場は年内の追加利上げをほぼ100%織り込んでいたが、利上げ見通しが大勢も、一部で据え置き見通しが出てくる状況となっている。
この結果、日米の金利差縮小期待が後退、現時点でかなりの金利差があることから、円キャリー取引拡大の流れが継続し、円売りが続くとの見通しが出ている。
また、世界的な株高の動きも、リスク選好からの円売りにつながっている。今週はスペースX社のナスダック100指数採用や、SKハイニックス社(用語説明2)の米国上場などが予定されており、ハイテクを中心とした株高が進みやすい地合いにある。
一方で、日本の通貨当局によるドル売り円買い介入への警戒感が継続しており、上値を抑える可能性がある。米雇用統計の弱さを受けて米国の早期利上げ期待が後退する中でのドル高円安の進行は、ファンダメンタルズからの乖離として介入が入りやすい地合いにつながる可能性がある。
こうした材料を見極めながら次のドル円の流れを見極める展開となりそう。ドル円は161円台を中心とした推移からどちらに大きな振れとなるか。リスクはややドル高方向とみており、1日に付けた162.84円の直近高値を更新する可能性がある。
ユーロ円も円売りが優勢か。対ドルでのユーロの堅調地合いも支えとなっており、6月の高値1ユーロ=186.32円を試す展開を予想している。
ユーロドルは1.14ドル台を中心にした推移から、次の流れを見極めたい。目先1.1400ドル前後がしっかりとなっているが、ドル高が再び強まるようだと、1.13台への下げがありそう。
用語の解説
| 骨太の方針 | 正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。日本政府が毎年6月ごろにまとめる翌年度予算に向けた政府の経済財政運営と構造改革の基本方針。首相が議長を務める経済財政諮問会議で議論される。 |
|---|---|
| SKハイニックス | 韓国の大手半導体メーカー。DRAM市場では、同じ韓国のサムスン電子、米国のマイクロンの3社で市場の多くを占めるビッグスリーと呼ばれる。韓国総合指数の時価総額の半分強を同社とサムスン電子で占めている。 |
今週の注目指標
| NZ中銀政策金利 7月8日11:00 ☆☆☆ | ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は昨年11月の会合で政策金利を現行の2.25%まで引き下げた後、今年に入って3会合連続で据え置いている。ただ、前回5月27日の会合では、政策委員6名の票が据え置き3票、利上げ3票で同数となり、最終的に規定に基づいてブレマン総裁が決定票を投じる形で据え置きとなった。賛否同数による決定票での政策決定は、RBNZの会合が現行方式となった2019年以来初めてのことである。 ブレマン総裁は会合後の会見で「今後の会合で利上げの可能性が高いとみている。もちろんデータの推移、インフレ見通しの変化、リスクバランス次第となる」と発言。さらに据え置き決定から2日後の29日には「インフレ抑制に向けて、政策金利を従来の想定よりも前倒しし、かつ大胆に引き上げる可能性が高い」と利上げに積極的な姿勢を見せており、今回の会合では利上げが見込まれている。 ただ、ここにきて原油高が一服し、インフレ上昇圧力が後退していることで、据え置きの期待も出てきている。短期金利市場での織り込みは、利上げが一時90%前後と圧倒していたが、その後70%台まで低下している。 こうした状況を受けて、今回の会合で、大方の見通し通り利上げとなるか、投票は再び割れるのか、会合後の総裁会見で今後について慎重な姿勢が示されるのかなどが注目されている。大方の予想に反して据え置きとなた場合は、NZドル売りが見込まれる。NZドル円は1NZドル=90円台を目指す可能性がある。 |
|---|---|
| 米FOMC議事要旨 7月9日03:00 ☆☆☆ | 6月16・17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が発表される。6月のFOMCでのタカ派姿勢を受けて広がった米国の早期利上げ期待は、2日に発表された6月米雇用統計の弱さを受けていったん後退している。 ウォーシュ議長の就任後初の会合となった6月FOMCでは、経済見通し(SEP)の中で示されたドットチャートにおいて、金利見通しを示した18名(ウォーシュ議長は不参加)のうち9名が年内の利上げ見通しを示すという予想外のタカ派優勢な状況や、会合後のウォーシュ議長記者会見での物価安定に向けた強いスタンスなどが目立った。 一方、声明では議長の意向によりフォワードガイダンスが削除されたため、どこまで強いタカ派姿勢を持っているのか見えづらい部分もあり、今回の議事要旨で今後のスタンスを詳細に確認しておきたい。 2日の雇用統計を受けて7月の利上げ期待が大きく後退したほか、雇用統計前までほぼ確実視されていた9月までの利上げについても、織り込み度は60%台まで低下している。公表される議事要旨では、政策金利の先行きだけでなく、雇用をどこまで楽観視していたのか、物価高への警戒感がどの程度強いのかなども併せて確認し、今後の金融政策見通しを占う材料としたいところ。利上げ期待が再び強まるようだとドル高となる。ドル円は162円台回復に向けた材料となる可能性がある。 |
| 日本国内企業物価指数(6月) 7月10日08:50 ☆☆ | 財部門の卸売物価指数に当たる同指標は、消費者物価指数(CPI)に比べてコスト高の価格転嫁などが進みやすく、変動が大きくかつ先行性のある指標として注目される。 中東紛争を受けた原油高により3月以降の上昇が目立っており、前年比の伸び率は2月の+2.1%から5月には+6.3%まで加速した。今回はさらに+6.8%へ拡大する見込みとなっている。 政府の「骨太の方針」において日銀の利上げを牽制する姿勢が見られたことで、早期の追加利上げ期待は後退しているが、予想を超える伸びとなって物価高の進行が印象付けられれば、再び利上げ期待が高まる可能性がある。その場合、ドル円が160円を割り込むきっかけとなるシナリオもありそうだ。 |
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