2026年08月10日号

(2026年08月03日~2026年08月07日)

先週の為替相場

協調介入後の神経質な攻防から一転、米雇用統計ショックで再びドル安へ

 先週(8月3日–8月7日)の外国為替市場でドル円は、前週末の歴史的な日米協調介入の余波が残るなか、「急落 → 反発 → 介入警戒による上値抑制」という三段階の神経質な展開となった。週初はトランプ米大統領の協調介入言及や片山財務相の強い姿勢を受けて一時155円台前半まで急落したものの、日米金利差を背景とした押し目買いが優勢となり、週半ばにかけて157円台へと自律反発。木曜日には原油高や米金利上昇を背景に200日移動平均線を回復し158.50円台まで上伸した。しかし、週末の米7月雇用統計が予想外の悪化を示したことで市場の空気は一変。9月の米利上げ期待が急低下し、ドル円は一時156円台半ばへと急落、ユーロドルやクロス円も巻き込む形でドル全面安の波乱の締めくくりとなった。

週前半(3日-4日): 要人発言で155円台へ急落後、自律反発し157円台での攻防に

 3日(月)の東京市場では、前週末の協調介入の余波が続く中、トランプ米大統領の介入言及や片山財務相らによる「さらなる介入も辞さない」との強い姿勢を受け、ドル円は一時155.23円まで急落。ユーロ円も179円台へと連れ安となった。しかし、ロンドンからNY市場にかけては、日米金利差の大きさから本格的な円高転換への確信は広がらず、自律的な買い戻しが優勢となり157円台を回復した。

 4日(火)は、IMFガイドライン(用語説明1)上の追加介入ハードルが高いとの見方から前日までの円買いに対する反動が出たほか、日本の10年国債入札が低調な結果となったこともあり、ドル円は157円台後半で堅調に推移。介入前より高いボラティリティを伴いながらも、下値の堅さが意識される展開となった。

週半ば(5日-6日): 原油高と米金利上昇で円売り再燃、200日線を回復し158円台半ばへ

 5日(水)は、米イランの合意期待報道で一時157.31円まで下押しする場面があったものの、その後はNY原油先物の持ち直しや日経平均の大幅高に伴うリスク選好の円売りが重なり反発した。

 6日(木)に入ると、様子見ムードから抜け出しドル買いが加速。ロンドン市場での欧州通貨安(ユーロ売り・ポンド買い)を経て、NY市場ではホルムズ海峡正常化期待の後退による原油高と米長期金利の上昇、さらにはウォーシュ米FRB議長のタカ派報道が重なり、ストップロスを巻き込んで158.50円付近まで急伸。重要な節目である200日移動平均線(158円付近)を完全に回復し、介入後の戻り高値を更新する動きとなった。ユーロ円も182円台半ばまで上昇した。

週後半(7日): 注目の米雇用統計が予想外の悪化、利上げ期待後退で156円台へ急反落

 7日(金)の東京・ロンドン市場は、注目の米雇用統計発表を控えて158円台前半での極めて狭いレンジ取引に終始した。しかしNY市場で発表された7月米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想外の減少となったうえ、過去2カ月分も大幅下方修正、平均時給の伸びも昨年12月以来の低水準にとどまる「ネガティブ・サプライズ」となった。失業率自体は改善したが、労働参加率(用語説明2)が2021年2月以来の低水準となった影響と見られた。短期金融市場では9月の米利上げ確率が55%程度から40%程度へと急低下。年前半の米労働市場の強さに陰りが見え始めたとの受け止めからドル全面安の展開となり、ドル円は一時156.70円まで急降下し、波乱のなかで週の取引を終えた。

今週の見通し

 今週のドル円相場は、先週末の米雇用統計ショックを受けた「ドル安圧力」と、依然として根強い「日米金利差を背景とした円売り需要」、そして「日米当局による協調介入への警戒感」という3つの要素が複雑に絡み合う、方向感の定まりにくい展開が予想される。

 最大の焦点は、米国の金融政策見通しの変化である。7月雇用統計の予想外の悪化により、市場が織り込んでいた「9月利上げ」のシナリオは大きく後退した。今週発表される米国の物価指標や小売売上高などの結果次第では、米景気減速への懸念が一段と強まり、米長期金利の低下とともにドル売り圧力が加速するリスクがある。この場合、協調介入による上値の重さも相まって、再び155円割れを試す展開も視野に入ってくる。

 一方で、週明け10日の市場では157円台から158円台前半へ戻す動きが見られるように、下値では押し目買い意欲が極めて強い。日銀の追加利上げ観測が早期には高まりにくい中、相対的な円のファンダメンタルズの弱さは変わっておらず、急落局面では買い戻しが入りやすい構造が続いている。158円付近に位置する200日移動平均線を巡る攻防が、目先のテクニカルなポイントとなりそうだ。

 ユーロ相場については、対ドルでは米利上げ観測の後退が下支えとなり、1.15ドル台半ばを中心とした底堅い推移が見込まれる。ただし、ユーロ圏の経済指標が強さを欠くなか、自力で1.16ドル台へ上値を伸ばす展開は想定しづらい。ユーロ円に関しては、ドル円の動向に強く牽引されることになり、日米の介入警戒感やリスクセンチメントの変化に神経質に反応しながら、179円〜183円の広いレンジでの不安定な振幅が続くことになりそうだ。

用語の解説

IMFガイドライン 国際通貨基金(IMF)が定める「6カ月以内に最大3回までの介入が自由変動相場制に分類される」という指針のこと。3営業日以内の市場操作は1回に分類されることから、7月30日、31日、8月3日までの介入が1回扱いとなる。4月30日、5月4日、5月6日に介入を実施しているため、半年で2回目、4日以降も介入を継続すると半年で3回目となる。
労働参加率 労働年齢人口のうち、実際に労働市場に参加している割合のこと。米国の場合は16歳以上の非軍事・非刑務所人口が労働年齢人口。そのうち、実際に働いているか、求職活動を行っている者の割合。雇用市場が悪化すると、求職自体をあきらめてしまう割合が増え、労働参加率が低下する。失業率は労働活動を行っているものが対象になるため、労働参加率が低下すると見かけ上失業率が改善することがある。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
8月11日13:30
☆☆☆
 豪準備銀行(RBA/中央銀行)は6月に続いて8月の理事会でも政策金利を据え置くことが市場でほぼ確実視されている。短期金利市場での据え置きの織り込みは98%となっている。全会一致での据え置きとなった前回6月の会合では金融環境の引き締まりを受けて景気が減速しつつあるとの見解を示す一方で、インフレ抑制のために必要であれば更なる引き上げを含めてあらゆる手段を講じるとした。ブロック総裁の会見では、インフレへの懸念が継続しており、更なる利上げの可能性を排除しないと発言するなど、タカ派姿勢が示された。6月の豪消費者物価指数(CPI)が前月比で予想外にマイナスになるなど、物価上昇圧力が後退する中で、今回の会合でもタカ派姿勢が維持されるかが注目されている。タカ派姿勢の鈍化がみられると豪ドル売りが見込まれる。豪ドル円は110.00円を試す可能性がある。
米消費者物価指数(CPI)(7月)
8月12日21:30
☆☆☆
 前回6月の米CPIは前年比+3.5%、前月比-0.4%となり、5月の+4.2%、+0.5%、市場予想の+3.8%、-0.1%を共に下回る弱い伸びとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数も、前年比+2.6%、前月比±0.0%と、5月の+2.9%、+0.2%、市場予想の+2.8%、+0.2%を下回っている。ガソリン価格が5月から6月にかけて大きく低下したことが全体を押し下げた。ガソリン価格は前月比で-9.7%の大幅な低下となった。食品とエネルギーを除いたコア指数では財(モノ)部門が前年比+0.8%と5月の+1.1%から鈍化した。中古車が6か月連続で前年比マイナスとなる-1.8%であった。5月の-0.2%から下落率も広がって、全体を押し下げた。また輸入依存度の高さもあって前回前年比+4.8%と高く出たアパレルが+3.9%まで鈍化した。前月比では+0.3%から-0.6%に低下している。中でも、貴金属価格の上昇などもあって5月は前月比+3.7%、前年比+21.4%とかなり高く出た宝飾品が前月比-6.0%、前年比+14.1%となったことが全体を押し下げている。コアサービス部門は前年比+3.2%とこちらも5月の+3.4%から鈍化した。CPI全体の35.6%、コアサービスの中では58.6%を占める大きな項目である住居費が前年比+3.3%と5月の+3.4%から鈍化し、全体を押し下げた。医療サービスの鈍化、このところ弱さが見られる自動車保険が前年比-4.1%と低下したことも押し下げ要因である。
 こうした状況を受けて今回の市場予想は前年比+3.5%と6月から横ばい、前月比は+0.2%で前回のマイナスから回復が見込まれている。コア前年比は+2.5%と6月から鈍化、コア前月比は+0.2%で前回の±0%からやや上昇する見込みだ。予想を超えて前回から伸びが強まると、9月の利上げ期待が押し上げられ、ドル高となる可能性がある。ドル円は159円に向けた動きが期待される。
米生産者物価指数(7月)
8月13日21:30
☆☆☆
 6月の米生産者物価指数(PPI)は前年比+5.5%と市場予想の+6.2%を大きく下回り、5月の+6.0%から伸びが鈍化した。5月分も+6.5%から+6.0%へ下方修正されている。前月比は-0.3%と、こちらも市場予想の±0%から予想外の低下となった。低下率は2025年4月以来となる。また5月分も+1.1%から+0.6%に下方修正されている。食品とエネルギーを除いたコア前年比は+4.7%とこちらも市場予想の+5.1%を大きく下回った。コア前月比は+0.2%で市場予想の+0.3%を小幅ながら下回っている。CPI同様にガソリンをはじめとするエネルギー関連の下げが全体を押し下げた。コア項目ではAI関連の力強い伸びもあり、航空運賃、宿泊費などの鈍化による全体の伸び鈍化を押しとどめて底堅さにつながった。
 今回の市場予想は前年比+4.9%、コア前年比が+4.1%と伸び鈍化が継続する見込みとなった。ガソリン価格の落ち着きが全体を支えるものの、2025年7月の数字がかなり高かったことで、前年比ベースでの伸びが抑えられそうだ。2025年は6月が前年比+2.4%に対して、7月は+3.2%、8月は+2.7%、コアも6月が+2.7%に対して7月が+3.5%、8月が+2.9%となっており、7月が高くなっていたため、前年との比較で今回の伸びが抑えられそうだ。CPI、PPIがともに予想を下回った場合は9月の利上げ期待が大きく後退し、ドル売り円買いが見込まれる。ドル円は155.00円トライが意識される。

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