2026年08月17日号

(2026年08月10日~2026年08月14日)

先週の為替相場

雇用統計ショックからほぼ全戻し、押し目買いの強さ際立ち159円台へ回復

 先週(8月10日–8月14日)の外国為替市場でドル円は、7日の米雇用統計ショックによる急落から一転し、力強い買い戻しが継続する展開となった。週初は急落の反動や株高を背景としたリスク選好の円売りから159円台を素早く回復。週半ばにかけて発表された米消費者物価指数(CPI)や米生産者物価指数(PPI)がインフレの落ち着きを示したほか、国内では日銀の早期利上げ観測に関する報道が飛び交ったが、下落は一時的にとどまった。週末には米消費関連指標の悪化を受けて一時158.60円へ下落する場面もあったが、すぐに159円台へと切り返した。日米金利差を背景とした円安トレンドの粘り強さと、下値での押し目買い意欲の強さが鮮明に確認された一週間となった。

週前半(10日-11日): 雇用統計後の急落を埋め、キャリートレード再燃で159円台を回復

 10日(月)の市場では、前週末の米雇用統計を受けた156円台への急落から一転、東京市場の早朝からじりじりと買い戻しが進んだ。日経平均をはじめとする株高を背景としたリスク選好の円売りや、構造的な円売りキャリートレード(用語説明1)の再燃が相場を主導し、NY市場にかけて159円台へと急反発。為替介入後の下げ幅の半分以上を取り戻し、200日移動平均線を再び上回った。

 11日(火)は東京市場が山の日の振替休日で休場となるなか、様子見ムードが広がった。ロンドン・NY市場では中東の地政学リスクを背景とした原油高や米金利の上昇がドルを支え、ドル円は狭い値幅ながらも159円台前半で底堅く推移した。

週半ば(12日-13日): 米インフレ指標の落ち着きや国内利上げ報道にも下値は限定的

 12日(水)は、ロンドン市場で一時158.60円付近まで急落する場面があったものの、売り一巡後は急速に買い戻された。NY市場で発表された米7月消費者物価指数(CPI)(用語説明2)は予想通りの落ち着きを示し、米利上げ圧力の後退が意識されたが、発表直後のドル売りは即座に買い戻され、159円台半ばへと切り返した。

 13日(木)には、東京時間に「高市政権が日銀の追加利上げを支持」との報道が伝わり一時円買いが強まったものの、追随する動きは限られた。NY市場で発表された米生産者物価指数(PPI)もインフレの沈静化を示したが、ドルの底堅さが際立ち、ドル円は159円台半ばで160円を意識する強含みを維持した。

週後半(14日): 日銀利上げ観測や米消費指標の悪化で振幅も、押し目買い意欲を証明

 14日(金)は、東京午後に「日銀が早ければ9月利上げを想定」との報道を受け、一時159.15円付近まで下落した。さらにNY市場では、米小売売上高やミシガン大消費者信頼感指数が弱い内容となったことでドル安が強まり、一時158.60円付近まで下押しした。しかし、売りが一巡すると再び159円台を回復して週の取引を終え、悪材料に対しても下値では押し目買い意欲が極めて強いことが示唆される往って来いの展開となった。

今週の見通し

 今週のドル円相場は、先週確認された「下値での強力な押し目買い意欲」と、心理的節目である160円や「日米当局による介入警戒感」が交錯し、高値圏での神経質なレンジ相場が予想される。

 最大のポイントは、底堅い円安トレンドが160円の大台を再び突破できるか否かである。先週の市場では、米国のインフレ指標(CPI・PPI)の落ち着きや消費指標の悪化、さらには日銀の追加利上げ観測報道といった「ドル売り・円買い」材料が立て続けに出たにもかかわらず、ドル円の下落は限定的であった。日米金利差の構造的な開きが意識される中、キャリートレードの巻き戻しが一巡したことで、158円台後半から159円台前半では押し目買いが入りやすい強固な地合いが形成されている。

 一方で、上値追いにも慎重さが求められる。米FRBの年内利上げ観測は後退しており、米長期金利の劇的な上昇は見込みにくい。加えて、160円という節目に近づくにつれて、日米当局による再度の協調介入への警戒感が急激に高まるのは必至である。今週予定されている日米の経済指標や要人発言をこなしながら、158円台半ばを下値の確かなサポートとしつつ、160円手前で上値が重くなる展開がメインシナリオとなりそうだ。

 ユーロ相場については、米国の利上げ期待後退を背景にユーロドルは1.15ドル台での底堅い推移が続いているものの、欧州経済が力強さに欠ける中、一段の上値追いは想定しづらい。ユーロ円に関しては、ドル円の底堅さに連動し、183円〜184円台の戻り高値圏での推移が見込まれる。ただし、クロス円全体としてドル円の介入警戒感の影響を強く受けるため、突発的な急落リスクには引き続き注意が必要である。

用語の解説

キャリートレード 低金利の通貨を借り入れて売り、高金利の通貨を買って運用することで、両通貨間の金利差(スワップポイント)による収益を狙う取引手法のこと。長らく続く日米金利差を背景に、低金利の円を売ってドルなどの高金利通貨を買う「円キャリートレード」が、為替市場における構造的な円安要因の一つとなっている。
消費者物価指数(CPI) 一般の消費者が購入する商品やサービスの価格の動きを測定した指標。インフレ動向を測る上で最も重要視される経済指標の一つである。中央銀行の金融政策決定に直結するため為替市場への影響が大きい。米FRBに関してはインフレターゲットの対象はPCE(個人消費支出)価格指数であるが、変化傾向が似ていることもあり、市場は発表の早いCPIを重視する傾向がある。

今週の注目指標

英消費者物価指数(CPI)(7月)
8月19日15:00
☆☆☆
 前回6月の英消費者物価指数(CPI)は前年比+2.6%と5月の+2.8%から鈍化。市場予想の+2.7%も下回った。ガソリンを含む輸送燃料の前年比が+5.7%と5月の+6.8%から大きく鈍化し、全体を押し下げた。食品・飲料(酒類除く)も+1.7%と5月の+2.2%から大きく鈍化しており、生活必需品を中心とした下げが見られた。ただ、賃金動向など国内要因が主体となることから中銀の注目度が高いサービスインフレは前年比+3.6%と5月の+3.7%から小幅鈍化に留まり、高い水準を維持している。
 7月のCPIの市場予想は前年比+3.0%と、一気の反発を見せ、中銀のインフレターゲットの許容幅(ターゲットである+2.0%の上下1%、+1.0%〜+3.0%)の上限に達する見込みとなっている。市場予想を上回り、許容幅を超える水準まで乗せた場合や、サービスインフレの上昇が見られた場合は、9月の利上げ期待が強まり、ポンド高となる可能性があるとみられる。ポンドドルは1.33ドル台トライが見込まれる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月28・29日開催分)
8月20日03:00
☆☆☆
 19日(日本時間20日午前3時)に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月28・29日開催分)が公表される。今年5月22日に就任したウォーシュFRB議長は、就任後初となった6月のFOMCで発表時の声明からフォワードガイダンスを削除。今後もフォワードガイダンスを示さない方針を示し、実際7月のFOMCでの声明もガイダンスを省いた簡素なものとなった。声明文自体も6月とほぼ同じであった。主な違いは、据え置きの決定が6月は全会一致、7月は9対3であったことを示した部分と、潤沢な準備預金を維持するという方針について、6月の「再確認する」から7月の「継続する」への表現変更、そして7月の声明で3名の反対者の氏名と0.25%の利上げ主張であったことを示した部分となっている。前職のパウエル議長時代の声明と比べると分量も3分の1程度となっている。
 こうした中、マーケットではFRBの姿勢を知る手段として議事要旨をより重要視している。
 前回6月のFOMC議事要旨では、結果的には全会一致となった同会合において、数人の参加者が金利を引き上げる根拠が既に存在すると主張していたことが判明。また、「参加者は総じて、会合間の期間に受け取った情報が、物価安定に対する上振れリスクが依然として高い一方で、最大雇用の達成に対する下振れリスクが幾分緩和したことを示唆していると判断した」と示した。これらを受けて市場ではFRB内のタカ派姿勢が印象付けられている。
 今回議事要旨が示される7月のFOMCでは、利上げを主張して反対した委員が3名出た。同じ方向(今回はタカ派方向)での反対3名は2016年9月のFOMC以来約10年ぶりとなる。ウォーシュ議長は記者会見での質疑応答で3名の利上げ主張について質問を受け、「利上げを焦るのではなく、収集したデータを見極め、検証するプロセスが必要」と説明した。また、タカ派的な意見も出た会合での議論について「仲の良い家族喧嘩」と評している。
 今回の議事要旨でタカ派姿勢がより強調されるようだと、ドル高が強まる可能性がある。短期金利市場の動きから算出した次回9月のFOMCでの利上げ期待は、7月28・29日のFOMC前までほぼ100%となっていたが、ウォーシュ議長のデータを見極める姿勢を受けて70%台へ低下。さらに7日の米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想外の前月比マイナス、平均時給の伸びが予想外に鈍化、労働参加率が2021年2月以来の低水準など、サプライズなほどの弱さを示したことで40%台まで低下し、据え置き見通しが過半数を超えてきている。こうした状況が議事要旨を受けてどこまで変化するかが注目される。
日本全国消費者物価指数(7月)
8月21日08:30
☆☆☆
 日銀の早期利上げ期待が強まる中、日本の物価統計にも注目が集まっている。6月の日本消費者物価指数(CPI)は、生鮮除く前年比+1.6%と5月の+1.4%からやや伸びたものの、インフレターゲットの+2.0%を下回る落ち着いた水準となった。ガソリン補助金などの影響で全体に落ち着いた伸びとなっている。
 7月の市場予想は+2.0%と伸びが強まる見込みとなっている。先行指標となる7月の東京都区部消費者物価指数は生鮮除く前年比+1.9%と、6月の+1.6%から伸びが強まり、市場予想の+1.8%を上回った。一時落ち着きを見せていた生鮮除く食品の伸びなどが見られ、全体を押し上げていた。全国CPIでも同様に伸びが見られると見込まれる。13日に発表された企業物価指数は前年比+7.2%と2カ月連続での7%超えという高い伸びを示した。CPIに対して先行性があるといわれる同指標の高い伸びが、ある程度波及しているようだと、予想を超える伸びとなる可能性もあり注意が必要。予想以上の伸びを見せると9月の日銀金融政策会合での利上げ期待が強まり、円買いとなる可能性がある。ドル円は158円台前半への下げが見込まれる。

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