2026年08月24日号

(2026年08月17日~2026年08月21日)

先週の為替相場

米オペ倍増でドル安進行も円の弱さ継続、160円手前で複雑な値動き

 先週(8月17日–8月21日)の外国為替市場でドル円は、中東情勢や日米の金融政策見通しに加え、米財務省が長期国債の買い戻しオペ(用語説明1)の倍増を発表したことが大きな材料となり、上下に値動きの荒い展開となった。週前半は米早期利上げ観測の後退によるドル売りと、米長期金利上昇や有事のドル買いによるドル高が交錯し、ドル円は一時159.78円まで上昇して為替介入後の戻り高値を更新した。しかし週半ばに米財務省のオペ拡大が発表されると米長期金利が急低下し、ドル急落の決定打となって一時158円割れを試した。その後は過度なドル安が一服し、日本の利上げ余地が限られるという「円の構造的な弱さ」も相まって159円台へと買い戻された。「ドル安と円安」というねじれが相場の上下動を複雑にする一方、欧州通貨などは対ドルで高値を更新し、全体としてドル独歩安の色合いが濃い一週間となった。

週前半(17日-18日): 戻り高値を連日更新、米金利上昇と有事のドル買いが下支え

 17日(月)は前週末の米消費指標下振れを受けた早期利上げ観測の後退からドル売りが先行し、ドル円は一時158.80円台まで下落した。しかし中東情勢への警戒感から「有事のドル買い」が流入すると反転。

 18日(火)にかけては、米長期金利の上昇や原油高を受けた日本の交易条件悪化への警戒感からドル買い円売りが加速し、ドル円は一時159.78円まで上昇して為替介入後の戻り高値をさらに更新した。

週半ば(19日-20日): 米財務省の買い戻しオペ倍増でドル急落、158円割れを試す

 19日(水)はアジア株安を受けたリスク回避の円買いが入り、ドル円は上値の重い展開となった。NY市場に入ると、米財務省が長期国債の買い戻しオペ規模を従来の倍となる40億ドルへ増額すると発表したことを機に米長期金利が急低下。急速なドル売りが進行し、ドル円は一時158円割れまで急落して重要な節目である200日移動平均線に到達した。ユーロドルも200日線を一気に上抜けて急上昇した。

 20日(木)はロンドン市場にかけてドル単独での弱さが際立ち、ユーロドルは3カ月ぶりに1.17ドル台へ乗せたものの、NY市場では過度なドル安が一服。根強い円安基調を背景にドル円には押し目買いが入り、159円台を回復した。

週後半(21日): クロス円は高値更新、ドル円は来週のイベント控え方向感欠く

 21日(金)は、米財務省のオペ増額発表を受けたドル売りの余波が残る中、資源国通貨や欧州通貨が対ドルで上昇し、ユーロ円やポンド円などクロス円は介入後の戻り高値を更新する堅調な推移を見せた。一方のドル円は、ドル安と円安の圧力が相殺し合い158円台後半で動意に乏しい展開が続いた。NY市場では週末を控えたポジション調整や米債利回りの反発から一時159円台を回復したが、27日からのジャクソンホール会議(用語説明2)を見極めたいとの思惑から積極的な売買は手控えられ、159.00円を挟んでの推移で週の取引を終えた。

今週の見通し

 今週のドル円相場は、週末に予定されているジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演に向け、神経質なレンジ相場が予想される。

 最大の焦点は、米金利低下に伴う「ドル安」圧力がどこまで波及するかである。先週の市場では、米経済指標の弱さに加えて米財務省の長期債買い戻しオペ増額がドル急落の強力な決定打となった。しかし日本側を見ると、日銀の追加利上げ余地は限定的との見方が依然として根強く、本質的な円買い需要は乏しい。このため、ドル円の下値は158円近辺に位置する200日移動平均線が引き続き強固なサポートとして機能しやすい。一方で、上値は160円の大台を前に当局の介入警戒感が重石となるため、158円〜160円の間で方向感を探る展開がメインシナリオとなりそうだ。

 ユーロやポンドなどの欧州通貨は、米国の利上げ期待後退を背景に対ドルでの上昇トレンドが鮮明になりつつある。ユーロドルは1.17ドル台での上値固めができるかが注目される。クロス円(ユーロ円、ポンド円)は、欧州通貨高と円の構造的な弱さを背景に高値圏での堅調な推移が見込まれるが、ドル円の動向や中東情勢の不透明感に伴う突発的なリスク回避の円買いには引き続き警戒が必要である。

用語の解説

長期国債買い戻しオペ(バイバック) 財務省や中央銀行が市場に流通している既発の国債を買い入れる操作のこと。市場の流動性向上や金利の安定を目的として行われる。米財務省がこの規模を拡大すると、市場に出回る国債が減少し債券価格が上昇(長期金利が低下)しやすくなるため、為替市場においてはドル売り要因として影響を与える。
ジャクソンホール会議 米カンザスシティー連銀が毎年8月下旬にワイオミング州のジャクソンホールで開催する経済シンポジウム。世界中の中央銀行総裁や経済学者が集まり、今後の金融政策の方向性に関する重要なメッセージが発信されることが多いため、金融市場から極めて高い注目を集める一大イベントとなっている。

今週の注目指標

外国為替平衡操作の実施状況(7/30-8/26)8月28日19:00
☆☆
 7月30日から8月3日にかけて行われたとみられるドル売り円買い介入は、2011年以来の日米協調介入が実施されたことが明らかにされている。日米通貨当局の円安に対する強い警戒姿勢が示された。28日の発表で、対象期間に行われた介入額の総額が判明する。介入実施日と日毎の介入額が判明するのは11月になる。前回4月30日、5月4日、5月6日の介入では、計11兆7349億円の介入額となった。今回は当座預金残高の動向などから、前回と大きく変わらない12兆円程度の介入であったと見込まれている。予想を超える額の介入が入っていた場合、財務省の円安阻止姿勢の強さを印象付け、円買いとなる可能性がある。ドル円は157円台に向けた動きが見込まれる。
米労働省年次基準改定(速報値)
8月28日23:00
☆☆☆
 米労働省が発表する雇用統計の年次基準の改定結果の速報値が公表される。毎月発表される事業所調査の非農業部門雇用者数(NFP)は、過去のサンプルを参考にした推計値での発表となっている。これに対して、毎年3月時点での州政府の失業保険料の支払い記録に基づいた全数調査が実施され、8月末から9月初めの時期に速報値が発表される。同データは2027年2月に、同年1月の雇用統計が発表される段階で過去データにさかのぼって修正される。前回2025年3月時点では91.9万人の下方修正が行われ、2024年4月から2025年3月までの雇用者数は、従来の月平均14.9万人の増加から7.3万人の増加であったことが判明した。今回は前回に比べると修正幅が小さいと見込まれており、また上方修正になる可能性が指摘されている。大きな上方修正となった場合は、利上げに向けたハードルが下がる形でドル買いとなる可能性がある。ドル円は159円台後半に向けた動きが見込まれる。
ジャクソンホール会議 ウォーシュFRB議長基調講演
8月28日23:00
☆☆☆
 27日から29日の日程で開催されるカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」。イベントの具体的なスケジュールは初日27日の発表となるが、最大の注目イベントであるウォーシュFRB議長による基調講演は、現地時間で28日午前8時(日本時間同日23時)から予定されている。
 ウォーシュ議長は7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、ジャクソンホール会議での講演について質問を受け、「演説内容について検討すら始めていない」と発言した。同講演について「近視眼的な議論に陥りがちだ」とも発言し、一歩引いた大局的な視点から「大きな問い」を提起するという考えを示している。
 議長は、FOMCでの声明文からフォワードガイダンスを外すなど、就任以来、市場の予断につながるガイダンスを極力減らし、市場の価格発見機能を優先するという姿勢を示している。そのため、今回に関しても今後の政策の方向性をはっきりと示さず、今年のジャクソンホール会議全体のテーマである「Financial Innovation: Implications for Payments and Policy(金融イノベーション:決済と政策への含意)」に沿った大局的な内容に終始するとの見方が基本的なシナリオとなっている。
 この場合、今後についてはデータ次第となる。据え置きを決めた7月のFOMCでは12名中3名が利上げに投票し、9対3での据え置き決定となった。そのため、一時は利上げに向けた期待が強まる場面が見られた。しかし、その後発表された7月の雇用統計の衝撃的な弱さ、予想通りだったとはいえ6月から伸びが鈍化した消費者物価指数、予想外の前月比マイナスとなった小売売上高などの状況から、利上げへの期待は後退してきている。ジャクソンホール会議が無風通過となった場合、9月15、16日のFOMCでの利上げ期待は現行の30%台で維持され、9月に入って発表される8月の雇用統計や物価統計などをにらむ展開となりそうだ。ドル円は158-159円台を中心とした推移が見込まれる。

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