2026年08月31日号
先週の為替相場
ジャクソンホールでのタカ派発言で米利上げ期待再燃、ドル円は介入後初の160円台回復
先週(8月24日–8月28日)の外国為替市場でドル円は、米金利動向や中東情勢、ジャクソンホール会議を控えた様子見姿勢が複雑に絡み合い、週半ばまでは不安定ながらも底堅い推移となった。週前半は米債利回り低下や中東情勢への警戒感からドル売り円買いが先行する場面もあったが、米金利の上昇や日経平均株価の急反発が円売りを促した。週半ばにはイラン情勢改善期待による原油安が円買いを誘い下落したものの、米経済指標が底堅さを示すとドル買いが復活した。週末のジャクソンホール会議においてウォーシュ米FRB議長が利上げを示唆するタカ派な発言を行うとドルが急伸し、ドル円は為替介入後初となる160円台をしっかり回復して週の取引を終えた。
週前半(24日-25日): イベント控えの様子見も、日経平均急反発などで底堅い推移
24日(月)は、週末のジャクソンホール会議や米財務長官による制裁発表を控えて動きづらい状況の中、米債利回り低下を意識したドル売りも見られ、ドル円は朝方に一時158.56円まで急落した。しかし、ロンドン市場にかけてポジション調整のドル買いが強まり、159円台を回復した。
25日(火)にかけては、米10年債利回りが上昇に転じたことや、一時1200円以上も大幅に切り返した日経平均株価の急反発が円売り要因となり、ドル円は159.40円まで上昇して底堅い推移を見せた。
週半ば(26日-27日): 原油安による円買いを跳ね返し、米経済の底堅さでドル買い復活
26日(水)は、イランとオマーンの暫定合意報道をきっかけとした原油価格の大幅下落により、日本の交易条件改善期待が高まり円買いが優勢となった。ドル円は一時158.88円まで下落したが、その後に発表された米PCE価格指数(用語説明1)や米GDP改定値がインフレの粘着性と個人消費の力強さを示すとドル買いが復活し、159円台へ再上昇した。
27日(木)は、氷見野日銀副総裁の発言が市場の期待ほどタカ派的ではなかったと受け止められて円売りが入り、ドル円は159.50円近辺まで上昇した。
週後半(28日): ウォーシュFRB議長のタカ派発言でドル全面高、160円台を突破
28日(金)は、注目されたジャクソンホール会議での基調講演において、ウォーシュFRB議長がインフレ高止まりへの強い警戒感を示し、利上げを示唆するタカ派的な発言を行った。これを受けて9月のFOMCでの利上げ期待が一時62.7%まで急上昇し、ドルは全面高の展開となった。ドル円は節目の160円を突破し、介入後の戻り高値を更新する160.20円まで上値を伸ばした。ユーロドルも1.16ドルを割り込んで1.1578ドルまで下落するなど、ドル独歩高の色合いを強めた。日本の財務省から過去最大となる15兆3993億円の為替介入額が公表されたが、円相場への影響は限定的であり、160円台を維持する形で週の取引を終えた。
今週の見通し
今週のドル円相場は、ジャクソンホール会議でのウォーシュFRB議長のタカ派発言を受けた米利上げ期待の再燃により、ドル高基調を維持しつつも上値の重さを探る展開が予想される。
最大の焦点は、米利上げ観測を背景としたドル買いがどこまで続くかである。先週末に為替介入後の戻り高値を更新したことでドル高の勢いが確認されたが、日本の過去最大規模の為替介入額が公表されたこともあり、160円台では再び当局による介入への警戒感が上値を抑える要因となる。下値については、底堅い米経済指標がドルのサポートとして機能しており、159円台を中心とした押し目買い意欲は強いと見られる。
もっとも今週は4日の米雇用統計をはじめ、ISM製造業/非製造業景気指数、米雇用動態調査(JOLTS)(用語説明2)など、米国の重要経済指標の発表予定が並んでいる。この結果次第ではドル高に一服感が出る可能性がある。特に米雇用統計に関しては、前回がサプライズな弱さを見せただけに注意が必要。ジャクソンホール会議でウォーシュ議長は「労働市場はかなり安定しており、FRBが現在最も注力すべきは物価である」と発言していた。雇用の安定性に対する信頼が崩れる状況になると、議長発言を受けた利上げ期待が後退する可能性があるだけに、弱い数字には警戒したいところである。結果次第では158円台に向けた動きが強まる可能性が十分にある。
介入についても警戒が必要。8月31日から9月1日にかけてG20財務相・中央銀行総裁会議が開催され、その中で日米財務相会合も予定されている。米国側から日銀の利上げに向けた圧力がかかる可能性があることに加え、ドル高円安阻止に向けた日米の連携を強調する姿勢が示されると、介入警戒感が一層高まる。さらに、単に姿勢を強調するだけでなく、介入を行うことで実際にアピールしてくる可能性も十分にあるとみている。
ユーロやポンドなどの欧州通貨は、米利上げ期待を背景としたドル高圧力により、対ドルで上値の重い展開が続くことが予想される。ユーロドルは一時1.15ドル台まで下落する動きを見せており、反発のきっかけを掴めるかが注目される。クロス円は、円の全般的な弱さを背景に高値圏での推移が見込まれるが、中東情勢などの地政学リスクに伴う突発的な変動には引き続き警戒が必要である。
用語の解説
| PCE価格指数(個人消費支出価格指数) | 米国の個人による消費支出の価格変動を示す指標。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ動向を測る上で最も重視している指標の一つであり、米国のインフレターゲットの対象となっていることから、金融政策の行方を占う上で市場の注目度が極めて高い。 |
|---|---|
| 米雇用動態調査(JOLTS) | 米労働省労働統計局(BLS)が非農業部門の求人件数、採用数、非初的離職数、解雇数などを集計して、毎月発表する指標。労働市場における需要側の動向を示す指標となる。求人件数に対する注目度が最も高い。 |
今週の注目指標
| 米ISM製造業景気指数(8月) 9月1日23:00 ☆☆☆ | 8月米ISM製造業景気指数の予想は55.2と、7月の55.6から小幅鈍化見込みとなっている。7月は約4年ぶりの高水準であり、小幅鈍化とはいえ水準的にはかなり強い数字となる。前回一気に伸びて52.8となった雇用部門は52.5とこちらも小幅鈍化見込みだが、水準的には強めが見込まれている。予想外の悪化を見せた場合は、4日の米雇用統計の厳しい結果見通しにつながり、ドル売りとなる可能性がある。ドル円は159円台前半を試す展開が見込まれる。 |
|---|---|
| NZ中銀政策金利 9月2日11:00 ☆☆☆ | ニュージーランド準備銀行(RBNZ/中央銀行)は7月の金融政策決定会合で2023年5月以来約3年2カ月ぶりとなる利上げを実施し、政策金利であるOCR(オフィシャル・キャッシュ・レート)を2.50%とした。2026年第1四半期の消費者物価指数(CPI)が前年比+3.1%と3四半期連続でインフレターゲット(2-3%)の上限を上回っていたことなどが利上げの判断材料とされた。その後発表された第2四半期CPIが前年比+4.1%と伸びが加速したこともあり、今回の会合での追加利上げが見込まれている。短期金利市場などでの織り込みは90%を超えており、市場の注目は声明などに集まっている。物価への警戒感を強く見せるようだと、年内追加利上げの期待が強まる形でNZドル買いとなる可能性がある。NZドル円は直近上値を抑える1NZドル=95.20円前後の水準を超えての上昇が見込まれる。 |
| 米雇用統計(8月) 9月4日21:30 ☆☆☆ | 前回7月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比-2.3万人となった。市場予想は+8.3万人となっており、予想を大きく下回るサプライズな結果となった。また、6月分が+5.7万人から+2.0万人、5月分が+12.9万人(速報時点では+17.2万人)から+6.3万人に、計10.3万人の大幅下方修正となっている。失業率は4.1%と6月から低下したが、労働参加率が61.4%と2021年6月以来の低水準へ低下しており、その影響が大きいとみられる(一般的に労働参加率が低下すると、見かけ上失業率が低下する)。 非農業部門雇用者数の内訳を確認すると、財部門では建設業が+2.2万人と伸びている。AIデータセンターの建設ラッシュが影響しているとみられる。サービス部門では教育・医療サービス部門が+2.5万人と、5か月連続でのプラスとなったが、6月の+5.4万人からは伸びが鈍化した。運輸・倉庫業は+1.0万人と6月の-1.1万人から回復した。弱さが目立ったのが小売業の-1.9万人。2か月連続の雇用減で、減少幅も広がった。娯楽・接客業は-4.0万人と6月の-4.3万人に続いて弱さを見せた。アミューズメント・カジノ部門の-1.01万人、飲食部門の-2.61万人などが目立っている。小売、アミューズメント・カジノ、飲食などは比較的景気に余裕があるときに業績が良くなる部門だけに、米景気の鈍化警戒につながった。 また、政府部門が-5.3万人の大きなマイナス。地方の政府部門の-4.96万人が響いた。ここ数年7月の速報値は市場予想を下回る弱さを見せており、その要因の一つが同部門の弱さだ。米国の学校は一般的に6月で年度が終わり、7月は同部門の就業者が一気に減少する。労働省は季節調整値でこの動きを調整するが、その季節調整がうまくいっていないとの見方が一部で広がっており、今回も同様の動きが見られた形となる。これは特殊要因となるため、翌月は回復する。 今回の見通しは、非農業部門雇用者数が+5.6万人とプラス圏をしっかり回復する見込みとなっている。失業率は4.1%で維持される見込み。平均時給は前月比+0.3%と7月の+0.1%から伸びる見込みだが、前年比では+3.0%と7月の+3.2%から鈍化が見込まれている。予想前後であれば雇用市場は堅調との期待につながる。 28日のジャクソンホール会議でのウォーシュ議長による基調講演では、労働市場はかなり安定との評価が示され、FRBが現在注力するべきは物価だと示す形となり利上げ期待につながった。今回市場予想前後もしくはそれ以上の力強さを見せると、こうした議長の見方を裏付ける形で利上げ期待が広がり、ドル高となりそうだ。ドル円は160円台定着に向けた動きとなる可能性がある。 |
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