2026年09月14日号

(2026年09月07日~2026年09月11日)

先週の為替相場

円キャリー巻き戻しと米牽制発言で一時152円台へ急落、後半は米インフレ警戒で乱高下

 先週(9月7日–9月11日)の外国為替市場でドル円は、円キャリー取引の巻き戻し、米財務長官による円安牽制発言、そして原油高や米物価指標を受けた米利上げ期待の再燃という複数の力が錯綜し、156円台から一時152円台まで急速に円高が進んだ後に大きく乱高下する波乱の展開となった。週初はレイバーデー明けの薄商いの中でストップ注文を巻き込み急落すると、8日にはポジション解消の動きが一段と強まり152.89円まで暴落した。週半ばにかけてもベッセント米財務長官の円売り牽制発言で上値の重い地合いが続いたが、週後半には米PPIの上振れやNY原油先物の100ドル大台乗せ、米10年債利回り上昇を背景に154.60円台まで反発した。週末の米CPI発表直後は9月FOMCでの利上げ期待から一時ドル買いが急伸したものの長続きせず、結局153円台半ばで週の取引を終えた。

週前半(7日-8日): 薄商いの中でのストップ発動と円キャリー巻き戻しで152円台へ急落

 7日(月)の東京市場でドル円は156.00円前後で始まったが、円キャリー取引の巻き戻し警戒感から実需の円買いが優勢となった。ロンドン市場ではNY休場を控えた流動性の薄い中、ストップ注文を巻き込んで売りが加速し154.06円まで急落。翌8日(火)の東京市場でも過度なポジション解消の動きが止まらず、昼前には152.89円まで急落した。その後は短期間での急落に対する過熱感や、原油高による日本の交易条件悪化懸念からロンドン・NY市場にかけて買い戻しが入り、154.40円台まで反発した。

週半ば(9日-10日): 米牽制発言で下値を試すも、米PPI上振れと原油高で154円台へ反発

 9日(水)はベッセント米財務長官による投機的な円売り牽制発言が警戒され、ロンドン市場で再び152.95円まで下落。NY市場では米財務省による国債買い戻しプログラム(用語説明1)第1弾の発表を受けて一時153円台後半へ浮上したものの、154円手前では戻り売りが重かった。10日(木)は日銀の増審議委員によるタカ派発言で一時153.29円まで押し戻されたが、NY市場で米生産者物価指数(PPI)の上振れやNY原油先物の100ドル乗せ、米10年債利回りの4.86%台上昇が重なりドル買いが殺到。ドル円は154.65円付近まで上値を伸ばし、4日ぶりに反発した。

週後半(11日): 米CPI後の利上げ期待で乱高下、153円台半ばで越週

 11日(金)は原油高一服や交易条件改善への期待から東京・ロンドン市場で153円台へ弱含んだ。注目の米消費者物価指数(CPI)はほぼ予想通りの結果となったが、発表直後に9月FOMCでの利上げ期待が一時90%台に跳ね上がり、ドル円は154.48円まで急伸した。しかしドル買いは長続きせず、すぐに利益確定売りや円高への警戒感から153.24円まで急反落。その後はサウジアラビアのパイプライン停止報道に伴うインフレ警戒感と週末の様子見ムードが交錯し、153.50円前後へと落ち着いて週の取引を終えた。

今週の見通し

 今週のドル円相場は、先週の急激な円高局面を経て下値の打診が一巡したものの、円キャリー取引のポジション調整圧力が残る中で、日米の金融政策見通しや原油価格の動向をにらみながら上値の重い揉み合いの展開が予想される。

 最大の焦点は、今月に迫った米FOMCや日銀金融政策決定会合に向けた市場の思惑と、原油高に伴う米国のインフレ再燃リスクの行方となる。先週のドル円は、円キャリー取引の巻き戻しと米当局者の牽制発言により一時152.89円まで急落した。その後は米物価指標の堅調さや原油100ドル乗せを受けた米追加利上げ観測から154円台後半まで買い戻されたが、155円台手前では戻り売り圧力が根強く、下落トレンドからの完全な脱却には至っていない。152円台半ばから155円台のレンジ内で神経質な値動きが続くとみられる。

 米国市場では、サウジアラビアのパイプライン停止や原油高を背景にFRBのタカ派姿勢が維持されるとの見方が強く、米長期金利が5%を視野に入れる中でドルが下支えされやすい環境にある。一方で、急激なドル高円安に対してはベッセント米財務長官ら米当局による牽制姿勢が意識されており、155円に接近する局面では追い買いが入りにくい。

 日本側では、日銀による早期追加利上げ観測が継続しており、国内金利の上昇やGPIF等の国内資産シフト観測が下値を支える円買い要因として燻っている。当局の介入やレートチェック(用語説明2)に対する警戒感も根強く、投機的なドル買い・円売りを抑える重石となろう。

 欧州通貨については、ユーロはフランスの財政悪化懸念や欧州経済の停滞が意識される中、ECBの利上げ後も対ドル・対円で上値の重い推移が見込まれる。ポンドも英国の予算案や原油高の余波を受け、対円での戻り売り圧力が強まりやすい地合いが続きそうだ。

用語の解説

米財務省国債買い戻しプログラム米財務省が需給調整などを目的に、発行済みの米国債を市場から買い戻す制度。国債の需要を高めて価格の下落を防ぎ、上昇する長期金利(利回り)を抑える狙いがある。米財務省は8月に従来の1回あたり最大20億ドルから、少なくとも40億ドルへの倍増を表明。9月9日の発表ではさらに引き上げて最大60億ドルとした。最初の買い戻しは9月10日に行われる。ただ、市場では100億ドル規模の買い戻しを一部で期待しており、発表直後はドル高となった。
レートチェック中央銀行(日銀)や財務省が為替市場の参加者(民間銀行など)に対し、現在の取引レートを問い合わせること。直接的な為替介入(ドル売り円買いなど)の前段階として実施されることが多く、当局による市場介入への強い警戒感を高め、投機的な動きを牽制する効果がある。

今週の注目指標

米FOMC
9月15・16日
☆☆☆
 15日、16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。結果発表は日本時間17日午前3時、同日午前3時半からウォーシュFRB議長による記者会見が行われる。
 米FOMCに関しては、利上げ見通しが優勢なものの、据え置き見通しも比較的最近まで残る展開となっていた。今月4日の米雇用統計発表前までは、利上げと据え置きで市場の見方が拮抗していた。雇用統計の強い結果を受けて利上げ見通しがやや優勢となったが、短期金利市場の利上げ織り込みは60%程度にとどまり、9日にベッセント財務長官による円安牽制発言が報じられると、据え置き見通しがやや強まって50対50に戻すなど、見方は割れていた。その後、10日にNY原油先物が100ドル台をつけるなど中東情勢を警戒した原油高が進む中で利上げ期待が高まり70%前後に到達した。11日の米消費者物価指数(CPI)を受けて利上げ期待がもう一段高まり、一時90%に達している。
 5月に就任したウォーシュFRB議長は、就任後の6月・7月のFOMCで政策金利の維持を決定した。声明からフォワードガイダンスを省き、会見でも金融政策の見通しをあいまいにすることで市場の思惑を偏らせず、データに基づいて会合ごとに判断する姿勢を示してきた。ただ、8月のジャクソンホール会議での基調講演で議長は、「基調的なインフレ率が目標である2%へ明確かつ十分な速度で向かっているとの確信がなければ、やるべきことがある」と物価高の継続に対する警戒感を示し、利上げの可能性を強く示唆した。一方、その時点でやや弱含んでいた雇用については、「労働市場はかなり安定しており、注力するべきは物価」との認識を示している。今月4日に発表された米雇用統計が予想外の強さを見せたことで、議長の発言通り労働市場の安定が確認される中、市場の注目は11日の米CPIと、先行指標でもある前日10日の米生産者物価指数(PPI)に集まっていた。
 10日発表の8月米PPIは前年比+5.4%と、7月の+4.8%から伸びが加速し、市場予想の+5.3%を小幅に上回った。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア前年比は+4.6%と、こちらも7月の+4.3%から伸びが加速し、市場予想と一致した。前月比は+0.4%でやや高めながら市場予想と一致し、コア前月比は+0.2%で予想の+0.3%を下回った。インフレターゲットの対象となるPCE価格指数に関連する項目では、航空運賃や外来医療などの医療費が上昇している。なお、PPIのデータを利用しており、比較的変動が大きく不確定要因となっていたポートフォリオ管理費については、データを基にした新たな推計手法へ切り替わる。
 11日のCPIも概ね予想通りで、コア前月比が+0.3%と予想の+0.2%を小幅に上回る程度にとどまった。しかし、発表後に利上げ期待が一気に高まり、一時的にドル高が進む反応が見られた。長引く中東情勢を受けた原油高を背景に今後の物価上昇警戒が広がる中、米物価統計の発表を無難にこなしたことで、利上げへの期待感が広がったとみられる。
 少し前までの「6対4」といった見方の割れ方であれば利上げ決定でドル高となるが、利上げが大幅に織り込まれた後だけに、利上げ決定自体によるドル高の動きは限定的となりそうだ。声明や議長会見も落ち着いた内容にとどまる可能性が高いとみられる。ただ、今回は四半期に一度の経済見通し(SEP)が公表される。前回6月のSEPでは2026年末時点での政策金利水準見通しについて3.75%(現行の3.50-3.75%から1回の利上げと据え置き見通しが拮抗)とし、2027年末を3.625%、2028年を3.375%としていた。こうした中、今回利上げ(3.50-3.75%→3.75-4.00%)に踏み切ると、2026年末時点での見通しの上方修正は確実視される。さらに市場の期待する追加利上げに向けて、どこまで見通しが変化してくるかなどが注目される。見通し次第ではドル高が進む可能性がある。ドル円はいったん155円前後までのドル買いが入る可能性がある。
英中銀金融政策会合
9月17日20:00
☆☆☆
 英中銀金融政策会合(MPC)の結果発表が17日午後8時に行われる。5会合連続での据え置きとなった前回の会合では9名の委員のうち3名が利上げに投票した。今回の会合でも据え置きがほぼ確実視されているが、英国の物価の上昇傾向への警戒感から、声明などで早期の利上げ期待が高まる可能性がある。利上げ主張の委員が増えるなどの状況によっては11月の利上げ期待が広がり、ポンド買いとなる可能性が指摘されている。ポンド円は210円台を回復する可能性がありそうだ。
日銀金融政策決定会合
9月17・18日
☆☆☆
 17日・18日に日銀金融政策決定会合が開催される。結果発表は18日昼前後となる。18日午後3時30分から植田日銀総裁の会見が行われる。今回の会合では、利上げがほぼ確実視されている。
 海外勢のごく一部に、高田日銀審議委員が大幅利上げの可能性に言及したことなどを受けて0.5%の利上げを期待する動きが見られたが、その後はさすがに大幅利上げは難しいとの見方が広がっている。10日に増日銀審議委員が長野県の金融経済懇談会で行った講演では、実質金利がマイナスの状況を「早く解消するべき」と発言。また「機動的な施策が行える体制が整えられるよう、さらなる利上げを進めていくことが金融正常化の完成には求められている」と、利上げに前向き姿勢を示した。また、講演後の記者会見では利上げのペースについての質問に「その都度考えていく」と発言。早急な利上げへの期待についてはけん制する姿勢を示した。
 こうした中、今回の会合の注目は植田日銀総裁の会見となっている。今後の利上げをどこまで示唆できるかが焦点となる。市場は10月の連続利上げを今のところ22%程度、12月までの利上げを90%程度とほぼ織り込んでいる。植田総裁が早期の追加利上げを示唆し、10月の連続利上げへの期待が高まるようであれば、円買いの動きが強まりそうだ。ドル円は1月に付けた年初来安値152.10円前後を意識する展開が期待される。

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