2026年09月28日号
先週の為替相場
原油高・米利上げで一時159円台へ上昇も、日米当局の牽制発言で急反落
9月14日から25日の外国為替市場でドル円は、中東情勢の緊迫化に伴う原油高とインフレ再燃懸念、米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ再開を受けて一時1ドル=159円台まで大きく上昇したが、週末にかけて日米当局による強力な円安牽制発言が相次ぎ急反落する波乱の展開となった。前半は、FOMCでの約3年ぶりの利上げ決定とタカ派なドットプロット(用語説明1)がドル買いを加速させた一方、日銀の金融政策決定会合での利上げ幅や植田総裁の会見が市場のタカ派期待に届かず、円売りが進行した。後半に入っても米長期金利が5%台に乗せる中でドル高が継続し、ドル円は200日移動平均線を突破して一時159円台まで上昇した。しかし、160円の節目を前に片山財務相による強い牽制発言、さらには高市首相がトランプ米大統領の円安懸念を伝えると様相が一変。一気にポジション調整の円買い戻しが強まり、結局157円台前半まで押し戻されて取引を終えた。
前半(14日-18日): 米利上げ再開と日銀会合後の円売りで一時158円台へ急伸
14日から16日にかけては、原油高によるインフレ懸念から米10年債利回りが5%の大台をうかがい、ドル買いが先行した。注目のFOMCでは全会一致で約3年ぶりとなる0.25%の利上げが決定され、年内追加利上げを示唆するタカ派なドットプロットが示されたことでドル買いが急加速。18日の日銀決定会合では予想通り1.25%への利上げが行われたが、一部委員が据え置きを主張したことや植田総裁の会見が具体性を欠いたことで円売りが優勢となり、一時158円台へ急伸した。その後、日銀によるレートチェック実施報道などで156円台へ急落するなど乱高下した。
半ば(21日-23日): 欧州通貨安と米金利高を背景にドル全面高、159円台を視界に
21日以降は、フランスの格下げなど欧州の政治・財政不安からユーロやポンドが売られ、相対的なドル高が進行した。22日には中東情勢の緩和期待による原油安で一時的に円が買い戻される場面もあったが、23日に発表された9月米PMI速報値が予想を大幅に上回ったことで米金利が再上昇。強いドル買い圧力が再燃したドル円は、介入警戒感が漂う中でも上値抵抗線を突破し、一時158円台後半へと上値を伸ばす展開となった。
後半(24日-25日): 日米当局の強力な円安牽制で急反落、157円台で越週
24日は片山財務相による「日米協調介入以降の原則は生きている」との発言で一時下落するも、原油高と金利高の圧力に押されて再び買い直され159円台まで上伸した。しかし25日、高市首相が日米首脳会談でトランプ大統領から円安への懸念が示されたことを明らかにし、片山財務相も「投機的な動きには断固措置」と強い口調で牽制。こうした口先介入(用語説明2)が投機的円売りへの強い警告と受け止められ、円の買い戻しが急加速した。ドル円は157円台前半まで押し戻されて週の取引を終えた。
今週の見通し
今週のドル円相場は、米利上げに伴う日米金利差を背景とした構造的なドル高・円安圧力と、日米当局による強烈な介入警戒感が真っ向からぶつかり合い、神経質なレンジ相場が予想される。
最大の焦点は、節目の160円を巡る市場の攻防と実弾介入のリスクである。先週、ドル円は米金利上昇を支えに一時159円台まで上値を伸ばしたが、片山財務相や高市首相、さらにはトランプ大統領からの牽制発言によって強力に押し戻された。市場では、160円台への接近は即座に為替介入を招くとの警戒感が極度に高まっており、当面は上値を追いづらい展開となりそうだ。
一方で、下値も限定的とみられる。米国ではFRBのタカ派姿勢やインフレ長期化懸念から米10年債利回りが5%の大台を維持しており、ドルの下支え要因として機能している。日本側も日銀が利上げを実施したとはいえ、日米の絶対的な金利差は依然として大きく、円キャリー取引を再構築する動きも燻っている。当面は156円台から159円手前のレンジを中心に、米雇用指標や中東情勢を受けた原油価格の動向、そして要人発言に一喜一憂する神経質な値動きが続くだろう。
欧州通貨については、ユーロはフランスの財政悪化懸念や独経済の停滞が重石となり、対ドルでの上値の重い展開が見込まれる。ポンドも英中銀のハト派寄りな姿勢転換が意識され、戻り売り圧力がかかりやすい。米国の利上げ期待も根強く、対ドルでは1ユーロ=1.14ドル台が重くなる展開を見込んでいる。展開次第では1.12ドル台トライの可能性もありそうだ。対円ではドル円での介入警戒が上値を抑える展開か。ただ、ドル円の地合いの強さもあって、ユーロ円での1ユーロ=179.00円割れなどの押し目では買いが入る展開が見込まれる。
用語の解説
| ドットプロット | 米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を担うFOMC(連邦公開市場委員会)の参加メンバーが、年末時点で適切と考える政策金利の水準を点で示した分布図。年4回公表され、市場参加者はこれをもとにFRBの利上げ・利下げのペースや到達点を予測する。今回はタカ派的な見通しが示され、米長期金利の上昇とドル買いの起爆剤となった。 |
|---|---|
| 口先介入 | 通貨当局(財務相や中央銀行総裁など)が為替市場の過度な変動に対し、発言を通じて市場参加者を牽制すること。「断固たる措置をとる」といった強い表現を用いることで、実際の市場介入(実弾介入)への警戒感を高め、投機的な動きを抑え込む効果を狙う。今回は日米双方のトップや閣僚から強い懸念が示され、円安進行に急ブレーキをかけた。 |
今週の注目指標
| 米雇用動態調査(JOLTS)(8月) 9月29日23:00 ☆☆☆ | 8月の米雇用動態調査(JOLTS)は、注目度の高い求人件数の予想が722.5万件と前回から小幅減少の見込みとなっている。前回7月分は727.1万件と、市場予想の730万件を小幅に下回った。6月分は速報の735.9万件から718.2万件へ下方修正されている。前回7月分のその他の項目をみると、解雇率が1.0%に低下し、レイオフは歴史的な低水準となっている。採用率は3.2%と6月の3.4%から低下しており、雇用の流動性が低下しているものの、解雇も少なく、低位安定している状況が示された。今回の数字もやや弱めの見込みとなっているが、低位安定が続くとみられることから、予想前後であれば相場への影響は限定的となりそうだ。ただ、予想からの乖離が大きいことがある指標だけに要注意である。 |
|---|---|
| ISM製造業景気指数(9月) 10月1日23:00 ☆☆☆ | 9月のISM製造業景気指数が1日に発表される。前回8月は54.6と市場予想の55.2を下回った。7月の55.6からも低下している。もっとも7月の55.6は2022年5月以来の高水準であり、54.6の水準自体は強いものとなる。内訳を見ると、新規受注が53.7と7月の56.7から低下。雇用部門は51.2と7月の52.8から低下している。投入価格指数が71.1で横ばいとなっており、価格の高止まり傾向が見られる。今回の予想は55.0と高水準を維持する見込みで、予想前後もしくはより強い結果が出るとドルを支える材料となりそうだ。ドル円は159円台回復に向けた動きが期待される。ISM非製造業は5日の発表となる。 |
| 米雇用統計(9月) 10月2日21:30 ☆☆☆ | 2日に9月の米雇用統計が発表される。前回8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+16.3万人と、市場予想の+5.3万人を大きく上回る好結果となった。速報時点で予想外の前月比マイナスとなっていた7月分も+2.1万人まで上方修正され、6月分も改定値の+2.0万人から+3.1万人に上方修正となっている。失業率は4.1%で7月から横ばいとなったが、労働参加率が61.6%と0.2ポイントの改善となる中での横ばい(一般的に労働参加率が上昇すると、失業率は悪化する)となっており、好印象となった。また、広義の失業率であるU6失業率が7.7%と7月の7.9%から改善した。 ※U6失業率:正規雇用を望みながらパートタイムに従事している非自発的パートタイマーや、調査期間中に求職活動を行わなかったものの、過去12カ月のうちに求職活動を行っており、労働の意思があるとみられる者を含んだ広義の失業率 非農業部門雇用者数の内訳を確認すると、直近2カ月続けてマイナスとなり、全体を押し下げていた娯楽・接客部門が+6.2万人と力強さを見せた。飲食業が+5.92万人となり全体を押し上げている。慢性的に人手不足で雇用増が続く介護・ケア部門を含む教育・医療部門は+2.9万人と堅調。7月もプラス圏だったが+1.2万人と伸びが鈍くなっていた。AIデータセンターの建設ラッシュが続く中、建設業が+2.2万人と好調さを維持。製造業も+1.6万人と堅調で、鉱業を含めた財部門全体で+4.1万人と7月の+2.9万人を上回る伸びとなっている。上下が比較的激しい情報業は-2.3万人と弱く、金融も-1.1万人と7月と同水準の減少となっているが、全体でみると幅広い業種で伸びを示している。 今回の予想だが、非農業部門雇用者数が前月比+10.0万人と、前回から伸びが鈍化する見込みだ。もっとも直近3カ月の平均+7.1万人を上回る伸びで、ダラス連銀が算出するブレークイーブン雇用者数(失業率を悪化させないために必要な雇用者数)の約3万人もしっかりと上回っており、雇用の堅調さが継続との印象だ。失業率は4.1%で維持される見込みとなっている。予想前後であれば、米雇用の安定が意識されることで、米追加利上げのハードルが下がるとして、ドル高につながりそうだ。ドル円は159円台の回復が十分に期待できるが、節目の160.00円手前では強い介入警戒感が上値を抑えてくる可能性が高い。 |
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