2026年10月05日号

(2026年09月28日~2026年10月02日)

先週の為替相場

日米の強力な円安牽制と原油高・日米金利差を受けたドル高円安が交錯

 9月28日から10月2日の外国為替市場でドル円は、日米両当局による円安牽制発言と160円手前での介入警戒感が強力な上蓋となった一方、中東情勢の緊迫化に伴う原油高や米長期金利の上昇を支えに156円台半ばから158円台半ばの間で荒く振幅する展開となった。前半は高市首相や片山財務相に加え、ベッセント米財務長官からも円安懸念が共有され介入警戒感が高まったが、原油急騰や米金利上昇を受けた有事のドル買いが下値を強力にサポートした。週の半ばには日銀決定会合の「主な意見」を受けた早期連続利上げ警戒の後退や、米ディーゼル輸出禁止報道による原油・金利高で一時158円台半ばまで上値を伸ばした。週末にかけては東京都区部CPI上昇や市場予想を大きく下回る米9月雇用統計を受けて一時156.95円まで急落する場面もあったが、日米金利差に着目した押し目買いや円キャリー取引の再構築から急速に下げ分を解消し、結局157円台後半で週の取引を終えた。

前半(28日-29日): 日米当局の円安牽制で介入警戒強まるも、原油高と米金利高が下支え

 28日はロンドン時間に三村財務官が日米両国による円安牽制姿勢を強調したことで、ドル円は一時156.50円まで約1円急落した。しかし、中東情勢の緊迫化や原油高を背景とした全般的なドル買いに支えられてすぐに157円台を回復。29日も片山財務相による牽制発言で一時157.21円まで下押ししたものの、FRBの追加利上げ観測や世界的な株安に伴うリスク回避の動きの中で157円台での一進一退が続いた。ベッセント米財務長官からも円の過小評価に対する明確な懸念が共有されたことで、160円を目前とした介入警戒感が市場に強く意識された。

半ば(30日-1日): 日銀利上げ牽制判明で円売り優勢、ディーゼル報道で一時158.45円へ急伸

 30日は東京午前に仲値のドル売りなどで一時156.38円まで急落後、株高を受けて157円台へ急反発。米8月PCEデフレーターの下振れで10月利上げ期待が一時後退する場面もあったが、高インフレ長期化懸念から年内の追加利上げ観測は根強くドルの下値は限定的となった。1日は日銀金融政策決定会合の「主な意見」で政府(内閣府)側からの利上げ牽制発言が判明し、早期連続利上げ警戒の後退から一時158.40円まで上昇。ロンドン時間には米政府のディーゼル輸出禁止検討報道で原油先物が92ドル台へ急上昇し、米10年債利回りも5.34%台へ跳ね上がったことで有事のドル買い(用語説明1)が加速、一時158.45円まで上値を伸ばした。

後半(2日): 東京CPI加速と弱い米雇用統計で急落も、買い戻し強まり157円台後半で越週

 2日の東京市場では、9月東京都区部コアCPIが前年比+2.7%へ加速し日銀の追加利上げ観測から157.50円台へ軟化。NY市場の米9月雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)および平均時給が市場予想を大幅に下回る弱い結果となり、一時156.95円までドル売りが急加速した。しかし、米長期金利が下げ渋ると円キャリー取引の再構築を狙う押し目買いが急速に流入。ドル円は雇用統計前の水準を上抜けて157.90円台まで反発し、地合いの強さを見せつけて越週した。

今週の見通し

 今週のドル円相場は、米雇用統計通過後も根強い日米金利差や原油高に伴うインフレ懸念を背景とした構造的なドル買い圧力と、158円台半ば以上に控える日米当局の介入警戒感が真っ向からぶつかり合い、高値圏での神経質なレンジ相場が予想される。

 最大の焦点は、200日移動平均線が位置する158円台半ばから節目の160円に向けた上値の重さと、日米による実弾介入のリスクである。先週は弱い米雇用統計を受けても157円割れの水準で強力な買いが入り、ドル円の底堅さが示された。しかし、158円台後半から160円にかけては片山財務相やベッセント米財務長官ら日米当局による強い牽制ラインが存在しており、実弾介入への警戒感から積極的な上値追いは抑えられやすい。

 一方で、下値も非常に硬い展開が見込まれる。中東情勢の不透明感や原油価格の高止まりにより米10年債利回りは5.3%台の高水準を維持しており、ドルの下支え要因として機能している。日本側でも東京CPIの上昇で日銀の追加利上げ期待は燻るものの、早期の連続利上げに対しては慎重な見方が多く、円キャリー取引を再構築する動きが押し目を支える。当面は156.50円から159.00円のレンジを中心に、地政学リスクや米インフレ関連指標、要人発言に一喜一憂する値動きが続くだろう。

 欧州通貨については、ユーロはフランスの財政悪化(用語説明2)やそれを受けた独仏金利格差の拡大、欧州のエネルギー不安などが重石となり、対ドルでユーロ売りが優勢となる展開が見込まれる。上値は1.13ドル台半ばで抑えられやすい。対円ではドル円の底堅さが下支えとなるものの、ドル円での介入警戒感が上値を抑えるため、176.00円から178.50円程度のレンジで上値の重い揉み合いを予想している。

用語の解説

有事のドル買い 地政学リスクの緊迫化やエネルギー価格(原油など)の急騰による世界的なインフレ長期化懸念が高まった際、基軸通貨である米ドルへ資金が集中して買われる現象。今回は中東情勢の停戦交渉難航や米ディーゼル輸出禁止報道による原油高・米金利高を受け、安全資産としてG10通貨の大半に対して全面的なドル高が進んだ。
フランスの財政悪化 フランスの財政は、経済成長の鈍化に加え、社会保障費の増大や金利上昇に伴う債務利払いコストの急増により赤字が拡大。公的赤字はEUの財政規律ルールである対GDP比3%以下の水準を大きく超え、5%超となっている。公的債務残高も対GDP比119%超と戦後最高水準に達している。フランス政府は10月1日に540億ユーロ規模の歳出削減を盛り込む緊縮予算案を議会に提出も、野党が強く反発している。これらの状況から信用格下げや独仏長期金利格差の拡大など、市場での警戒感が一段と強まっている。

今週の注目指標

米ISM非製造業景気指数(9月)
10月5日23:00
☆☆☆
 1日に発表された9月のISM製造業景気指数は、市場予想を小幅下回る54.5と8月の54.6からほぼ横ばいとなった。好悪判断の境となる50をしっかり上回っての推移が続いており、予想を下回ったとはいえ堅調さが意識された。内訳をみると、注目度の高い新規受注、雇用がともに8月を上回っており、まずまずという印象だった。
 ISM非製造業は前回8月分が55.4と7月の54.1から大きく上昇し、約3年半ぶりの高水準となった。市場予想は54.1の横ばいだった。新規受注が60.9まで上昇し全体を押し上げた。今回の予想は55.0と小幅鈍化も、前回が強すぎただけで、水準的にはかなり高い。予想前後の好結果が示され、内訳でも前回強かった新規受注や雇用などが堅調さを維持するようだと、ドル高が見込まれる。ドル円は159.00円に向けた動きとなる可能性がある。
片山財務相・植田日銀総裁発言
10月6日
☆☆
 ここにきて強まる日米の通貨当局による円安牽制姿勢や、9月の米FOMCと日銀金融政策決定会合を受けての日米金利差継続への思惑からの円キャリー取引拡大の見込みなどもあって、日米の政府・中銀関係者発言に注目が集まっている。特に注目は6日の全国証券大会であいさつを行う片山財務相と植田日銀総裁の発言。円安進行についての牽制姿勢が強調されるとドル円は157.00円に向けた動きが見込まれる。そのほか、5日の臨時国会召集での高市首相の演説、6日のウィリアムズNY連銀総裁やボウマンFRB副議長よる発言なども注目される。
米FOMC議事要旨
10月8日03:00
☆☆☆
 10月7日(日本時間8日午前3時)に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月15・16日開催分)が公表される。9月のFOMCでは市場予想通り政策金利が0.25%引き上げられ、FF金利誘導目標はそれまでの3.50%-3.75%から3.75%-4.00%になった。利上げは約3年ぶりとなる。利上げ自体は完全に織り込み済みだった。ただ、投票結果や政策金利見通しを受けてややタカ派との印象が広がった。市場では一部のメンバー(ウォラー理事など)が利上げ反対に回る可能性が意識されていたが、結果的には全会一致での利上げとなった。四半期に一度発表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)で示された政策金利見通し(ドットプロット)では、ウォーシュFRB議長を除く18名のうち、16名が年内少なくとも1回の追加利上げを示すものとなった。
 公表される議事要旨では、こうした市場予想以上にタカ派な印象のあったFOMCでの議論がどのようなものであったのかが注目される。9月30日に発表された8月の米PCE(個人消費支出)価格指数の弱い伸びや、10月2日発表の米雇用統計での非農業部門雇用者数の予想を下回る伸びなどに、10月27、28日のFOMCでの連続利上げ期待は後退している。ただ、9月のFOMCでのドットプロットでは18名中4名のメンバーが10月・12月の連続利上げを予想していた。こうしたタカ派なメンバーの姿勢なども注目される。米早期利上げ期待が強まるようだとドル高が強まる可能性がある。ドル円は159円台に向けた動きが見込まれる。

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