2026年10月13日号

(2026年10月05日~2026年10月09日)

先週の為替相場

欧州政治不安と中東情勢緊迫化を受けた原油高を背景にドル高優勢

 10月5日から12日の外国為替市場は、欧州の政治・財政不安と中東情勢の緊迫化を背景とした原油高が相場を牽引し、全般的にドル買いが優勢となる展開となった。週の前半は、フランスの財政悪化懸念など欧州発のリスクが意識されてユーロ安・ドル高が進行。日銀の追加利上げに対する慎重な姿勢も重なり、ドル円は底堅く推移した。週半ばには米長期金利の上下動や米大統領のイラン攻撃見送り発言などで一時157円台半ばへ下落する場面もあったが、押し目買いが入り下値は限定的であった。週末から週明け12日にかけては、サウジアラビアの首都リヤドへのフーシ派の攻撃と、それに対する米国の参戦検討報道を受けて中東情勢が一段と緊迫化。原油高に伴うインフレ警戒から有事のドル買いが加速し、ドル円は重要なテクニカル節目である200日移動平均線(用語説明1)を上回る158.75円近辺まで上値を伸ばした。

前半(5日-6日): 欧州不安によるユーロ売りと日銀の利上げ慎重姿勢でドル高円安へ

 5日から6日にかけては、フランスの財政悪化懸念やデモ拡大の報道を受け、独仏利回り格差(用語説明2)が拡大しユーロ売りが先行した。ユーロドルは一時1.1160ドル台へ急落し、ユーロ円も176円台へ沈むなど欧州政治不安が市場を支配した。一方、ドルは安全通貨として買われ、ドル円は157円台から158円台へと上昇。さらに植田日銀総裁の発言から10月の日銀追加利上げへの慎重姿勢が意識されると円売りが優勢となり、158.20円付近で堅調に推移した。

半ば(7日-8日): 仏政局不安再燃やトランプ氏の発言に振らされるも下値は限定的

 7日から8日にかけてもフランスの政局・財政不安がくすぶり、ユーロの上値が重い展開が続いた。ドル円は米長期金利の上昇や原油高を支えに一時158.50円台まで上昇したものの、日米当局の円安牽制への警戒感から上値を抑えられた。8日のNY市場では、トランプ大統領が中間選挙前のイラン攻撃を見送ると表明したことや米30年債入札の好調を受けて米長期金利が低下。これに伴いドル円は157円台半ばへ急落したが、下値ではすぐに押し目買いが入り強いサポートが確認された。

後半(9日-12日): 中東情勢の一段の緊迫化で原油高が加速、ドル円は158.75円へ

 9日の東京市場では高市首相の「為替・物価動向を注視」との発言などで乱高下したものの、ドル円は158円台を維持した。連休明けの12日は日本や米国が祝日で薄商いとなる中、サウジアラビアのリヤド国際空港へのフーシ派の攻撃と、トランプ大統領の参戦検討報道が伝わった。中東情勢の緊迫化に伴う原油高とインフレ警戒からドル買いが強まり、ドル円は200日移動平均線を上抜けて一時158.75円近辺まで上値を拡大。欧州通貨は対ドルで軟調に推移した。

今週の見通し

 今週のドル円相場は、中東情勢の緊迫化などを受けたドル買いと、日米通貨当局の円安けん制姿勢への警戒感を背景とした円売りに慎重な動きが交錯する中で、方向性を探る展開となる。

 中東情勢を受けた原油高や、それに伴う米インフレ再燃への警戒感がドルの下支え要因として機能しており、地合いは堅調である。日銀の追加利上げに対する慎重な見方から日米金利差の縮小観測が後退していることも、円売り・ドル買いを後押ししている。

 一方で、159円台から160円の大台に向けた上値追いには慎重姿勢が予想される。市場では日米両通貨当局が160円を超える過度な円安を望んでいないとの見方が強く、実弾介入への警戒感が強力な上値抵抗として意識されやすい。現行水準での値固めを進めつつも、地政学リスクのヘッドラインや米長期金利の動向に神経質に反応しながら、157.50円から159.50円のレンジを中心とした高値圏での推移が見込まれる。

 なお、今週は14日に米消費者物価指数(CPI)、15日に米生産者物価指数(PPI)と米小売売上高の発表を控えている。短期金利市場動向から計算する今月27日、28日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利見通しは、据え置きが80%程度とほとんどを占めている。ただ、物価が予想以上の伸びを示し、個人消費が堅調さを示すようだと、利上げ期待が強まる可能性がある点には注意したい。

 欧州通貨については、ユーロはフランスの財政・政局不安などの欧州政治リスクが引き続き重石となる。投機筋のユーロ弱気ポジションは極端な水準に達しているものの、経済指標の強い上振れがない限り本格的な買い戻しは入りづらく、ユーロドルは1.11ドル台から1.12ドル台での上値の重い展開が予想される。対照的にポンドは、11月に予定される英国とEUの首脳会議など関係改善への期待がサポート要因となり、対ユーロや対円で底堅さを発揮しそうだ。

用語の解説

200日移動平均線 過去200営業日の終値の平均値を結んだ線で、中長期的な相場のトレンドを判断する上で世界中の市場参加者が最も重視するテクニカル指標の一つ。現在のドル円相場では158円台半ばに位置しており、これを明確に上抜けて定着できるかが、さらなるドル高・円安トレンド継続を見極める重要な試金石として注目されている。
独仏利回り格差 異なる通貨での債券利回りは、それぞれの国の経済力、インフレ率などの違いから、将来的な為替差損のリスクがあり、同水準にはならないが、同じユーロ圏であるドイツとフランスは、償還・利払いとも同じユーロであり、為替リスクは存在しない。利回りの差は両国の信用力の差からの需給の差となる。フランスの財政赤字の拡大などを懸念したフランス国債利回りの上昇と、欧州内での安全資産としての資金流入によるドイツ国債利回りの低下を受けて、ベンチマークとなる10年債利回りの格差は2011年の欧州通貨危機以来の水準まで拡大している。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI)(9月)
10月14日21:30
☆☆☆
 前回8月の米CPIは前年比+3.4%と7月から横ばい。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+2.4%と7月の+2.5%から小幅鈍化となった。ともに市場予想通りだ。前月比は+0.4%と7月の+0.1%から伸びが加速、コア前月比は+0.3%と7月の+0.2%から小幅ながら伸びが強まっている。前月比もともに市場予想通りとなった。
 内訳を確認すると、伸びていたのが中東情勢を受けた原油高からのエネルギー価格。ガソリンが前年比+27.4%(7月+24.6%)、エネルギー全体では+16.3%(7月+14.7%)となり、全体を押し上げた。食料品は前年比+2.7%と7月の+3.0%から伸びが鈍化。卵、乳製品、ノンアルコール飲料などの上昇が見られるものの、サイクロスポーラ感染症の影響で需要が鈍化しているレタスの大幅な値下がりもあり、青果の価格が低下、肉、魚なども伸びが抑えられている。コア項目では、財が+0.7%と7月の+0.8%から伸びが小幅に鈍化。中古車が8か月連続でのマイナス圏となる-2.3%となり、7月の-1.9%から下落率も拡大。関税の影響もあって高い伸びが見られるアパレルは+3.6%と高水準ながら7月の+3.9%から伸びが鈍化しており、全体を抑える形となっている。コアサービスは+3.0%で7月から横ばいとなったが、住居費を除くコアサービスが+3.1%で7月の+3.0%から小幅に伸びが強まり、住居費とエネルギーサービスを除いたスーパーコアは+3.0%と7月の+2.8%からしっかりと伸びる状況となった。国内要因が強いコア部分のサービス価格の上昇は物価高への警戒につながっている。
 今回の予想は前年比+3.6%、コア前年比+2.5%でともに8月を超える伸びが見込まれている。米国とイランの対立が長期化する中で、原油高からのガソリン価格の上昇が継続。9月の米国のガソリン小売価格は、EIA(エネルギー情報局)による全米全種平均で1ガロン当たり4.491ドルと8月の4.192ドルから前月比で7.1%の上昇。前年比でみると7月の+28.7%から+36.4%まで上昇している。CPIは都市部のみのデータとなるため、全米が対象のEIAのデータと完全には一致しないが、傾向はほぼ同じとみられるため、ガソリン価格およびエネルギー価格全体の上昇が総合指数を押し上げるとみられる。またガソリン価格の上昇は流通などのコスト上昇につながるため、コア項目にも影響が出る。コアの伸びが予想を上回った場合、10月の利上げ期待の再燃などを招く形でドル高になる可能性には留意したいところだ。
 一方、前回の前年比+3.0%と7月の+3.2%から鈍化した住居費の動きにも要注意だ。ここにきて米長期金利の上昇から米住宅ローン金利の上昇が加速傾向となっている。フレディーマック(連邦住宅抵当貸付公社)が公表する30年固定金利は9月に7%を超え、最新で7.4%となっている。7月は6.4%台、8月は6.6%台が中心となっていたため、かなりの上昇傾向だ。これにより住宅販売の鈍化から、住居費が抑えられている可能性がある。住居費はCPI全体の35.3%、コアCPIの44.6%を示す最大の項目だけに要注意となる。10月の早期利上げ期待が高まるようだとドル円は160.00円に向けた動きが警戒される。一方で年内の追加利上げ期待が後退するような弱い伸びを見せると、ドル円は157.00円に向けた動きが見込まれる。
米生産者物価指数(PPI)(9月)
10月15日21:30
☆☆☆
 CPIに対する先行性があるといわれる米生産者物価指数(PPI)。前回8月分はエネルギー価格の再上昇を受けて前年比+5.4%と7月の+4.8%から伸びが加速した。市場予想の5.3%も上回った。財の価格が伸びる一方で、サービスについては前月比で伸びが鈍化した。もっとも、道路貨物輸送コストが急伸するなど、エネルギー価格上昇の影響が出てきており、今後の価格転嫁への警戒感につながっている。
 今回の予想は前年比+5.4%と8月から横ばい予想となっているが、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア前年比が+4.4%と8月の+4.6%から鈍化見込みとなっている。予想からの乖離には要注意で、予想に反してコアが8月から伸びているようだと、ドル高が見込まれる。同時刻に発表される米小売売上高次第では大きなドル高となる可能性がある。
米小売売上高(9月)
10月15日21:30
☆☆☆
 前回8月の米小売売上高は、前月比+1.2%と、7月の-0.5%から一気に伸びた。ガソリン価格の上昇を受けてガソリンスタンド売り上げが+3.1%と大きな伸びとなった。無店舗小売りが+2.6%とこちらも大きく伸びているが、こちらは小売り大手アマゾンが大型の会員セール「アマゾンプライムデー」を例年の7月から6月に前倒ししたことによる7月の落ち込みをうけたものとなる。スポーツ・娯楽・書籍、家電などの伸びも見られ、幅広く消費が強い結果となった。
 今回は前月比+0.3%と伸びが鈍化する見込みとなっている。変動の激しい自動車を除く前月比も+0.6%と8月から鈍化見込みとなっている。前回が強すぎた分の反動が警戒されている。ただ、8月の数字は幅広い伸びが見られ、米家計消費の底堅さが印象付けられた。今回も予想を超える伸びとなる可能性が十分にありそう。同時刻に発表されるPPIと小売売上高がともに強く出た場合、ドル円は160円に向けた動きとなる可能性がある。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。