2026年10月26日号
先週の為替相場
世界的なハイテク株安で週後半にリスク回避の円買い加速
10月19日から23日の外国為替市場は、週前半こそ方向感を欠くもみ合いが続いたものの、後半にかけては世界的なハイテク株安を契機としたリスク回避の円買いが相場を主導する展開となった。週初から週半ばにかけてドル円は、中東情勢への警戒や底堅いドル高期待を背景に158円台半ばまで上昇し158.50円前後に控える200日移動平均線(用語説明1)を試す場面も見られた。しかし、日米通貨当局による円安けん制姿勢への警戒感が根強く上値を抑えた。さらに21日には日銀の氷見野副総裁が追加利上げを示唆したことで上値の重さが一段と意識された。週後半に入ると、米半導体大手ラムリサーチの決算後の株価急落を契機にAI関連株への過剰投資懸念が世界的な株安へ波及。投資家の安全資産への逃避行動から米国債や円が買われ、ドル円は直近のサポートとなっていた157.50円前後を割り込んで、一時156円台前半まで急落した。週末にかけて城内経済財政相の発言で一時157円台へ反発する場面もあったが、信用不安の再燃から再び156円台へ押し戻された。欧州通貨は、ユーロがフランスの財政不安や軟調なPMI指標に圧迫され一時1.11ドル台へ軟化したものの、下がるとすぐに反発する展開。1.12ドル台を中心にもみ合いとなった。一方、ポンドは英雇用統計の改善やインフレ高止まりに伴う利上げ期待から1.34ドル台を回復するなど底堅く推移した。クロス円は株安を受けた急激な円高進行により、ユーロ円が175円台へ、ポンド円が209円台へ急落するなど荒れ模様となった。
前半(19日-20日): 200日線を試すも介入警戒で膠着、米指標下振れなどで揉み合い
19日の東京市場では、中東情勢への警戒や株安を受けた円買いからドル円は一時157.70円まで下落したものの、日経平均の下げ幅縮小や原油高一服で158.15円まで反発した。ロンドン市場では原油先物の反落でドル売り円買いが先行して一時157.90円割れとなったが、ユーロ安ドル高の波及から158.20円台へ持ち直した。NY市場では米長期金利の上昇を支えにドル円は158円台半ばまで上昇し200日線を試す展開となったが、為替介入への警戒感から上値追いは慎重だった。ユーロドルはフランスの大規模デモ警戒から一時1.1183ドルまで急落したものの、ユーロ売りは続かず、安値から反発して1.12ドル付近で底堅く推移した。
20日の東京市場では、朝方に海外市場の流れを引き継いで158.60円まで買われたが、アジアのハイテク株安に伴うリスク警戒の円買いや円売り牽制への警戒感から午後は158.09円まで反落。ロンドン市場では独ZEW景況感指数(用語説明2)の悪化を受けてユーロドルが1.1230ドル台から1.1205ドルへ急落し、ポンドドルも連れ安となった。NY市場では米住宅指標の下振れや中東協議が進展するとの未確認報道を受けてドル売りが優勢となり、ドル円は一時157円台へ下落したが、米外交官が協議進展の報道を否定した後に158円台へ買い戻されるなど神経質な値動きが続いた。
半ば(21日-22日): 氷見野副総裁発言と半導体株急落で円買い加速
21日の東京市場では、ドル円が朝方に158.39円まで上伸したものの、日銀の氷見野副総裁が追加利上げを示唆する発言を行ったことで円買いが優勢となり、午後には158.04円まで下落。ロンドン市場でもポジション調整のドル売りから157.80円台へ軟化した。NY市場では158円を挟んで膠着状態となったが、英CPIの上振れを背景にポンドドルが1.3400ドル台を回復する一方、クロス円は徐々に上値が重くなった。
22日は相場の潮目が一変した。東京市場では、米ラムリサーチの決算を受けた時間外取引での急落を契機に、日経平均をはじめアジア株が大幅に下落。リスク回避の円買いが加速し、ドル円は朝方の158.20円前後から157.06円まで1円超急落した。ロンドン市場に入ると欧州株安も重石となり、10月安値を割り込んで156.69円まで一段安。ユーロ円はストップロスを巻き込んで昨年11月以来となる175.55円まで、ポンド円も209.48円まで急落した。NY市場でもAI関連銘柄への過剰投資懸念から安全資産への逃避が広がり、米国債やスイスフランとともに円が買われ、ドル円は一時156円台へ下落した。
後半(23日): 閣僚発言で一時反発も、AI信用不安再燃で156円台へ失速
23日の東京市場では、前日の米ナスダック大幅安の流れを引き継ぎ、朝方に一時156.08円まで下落した。しかし、城内経済財政相がデフレ脱却に関して慎重な見解を示したことで日銀の早期追加利上げ観測が後退し、ドル円は157.12円まで急反発、クロス円も連動して買い戻された。ロンドン市場では東京からのドル買い・円売りの流れを引き継いで157.16円を付けたものの、欧州時間に入ると世界的なAI関連銘柄への信用不安が再燃し、再びリスク警戒の円買いとなって156.50円台へ反落した。ユーロドルもフランスおよびユーロ圏のPMI速報値が市場予想を下回ったことからユーロ売りが先行し、1.1185ドル前後まで軟化した。NY市場では一時157円台へ買い戻されたものの、AI過剰投資への懸念から安全資産の米国債買いが続き、米長期金利の低下がドル円の重石となって再び156円台へ押し戻され、156.80円台で週の取引を終えた。
今週の見通し
今週のドル円相場は、世界的な株安を受けたリスク回避の円買い圧力と、日米の金融政策イベントを見極める展開が予想される。
週明け26日の東京市場でも、ドル円は早朝に157.22円まで買い戻される場面が見られたものの戻りは鈍く、仲値通過後には再び156円台半ばへと押し戻されており、上値の重さが鮮明となっている。相場を揺るがしているAI・ハイテク銘柄を巡る過剰投資懸念や信用不安は根強く、安全資産としての米国債買いに伴う米長期金利の低下がドルの重石となりやすい。心理的な節目でもある155.00円を割り込むようなら、これまでの156.00円-159.00円のレンジを中心とした取引から、152円を目指す流れへと、中長期のトレンドが完全に転換するリスクを孕んでいる。
今週は日、米の金融政策会合が最大の焦点となる。ともに政策金利は据え置きとなる見込み。米FOMCに関しては短期金利市場で利上げの見込みが10%程度残っており、サプライズには注意が必要。据え置きとなった場合は、今後に向けての姿勢がどこまで示されるかがポイントとなる。日銀金融政策決定会合は据え置きで見通しがほぼ一致している。氷見野副総裁の発言にあるように日銀の利上げ継続の姿勢自体は崩れておらず、植田総裁の会見などで12月会合での利上げの地ならしが行われれば、一段の円買い材料となり得る。上値は157.50円から158.00円水準で戻り売りが厚く、下値は節目の156.00円や直近安値の155.50円、さらには155.00円を視野に入れた下値模索の展開を見込む。予想レンジは155.00円から158.00円。
欧州通貨については、ユーロはフランスの政治・財政不安に加え、直近発表されたPMIの悪化など景気減速懸念が上値を圧迫し続ける。ただ、警戒されていたムーディーズの格付け見直しについては、先週金曜日NY午後に「据え置き」が発表されており、警戒感が少し後退している。木曜日のECB理事会までは、1.1200ドルを中心とした推移が見込まれる。ECB理事会では政策金利の据え置きで見通しがほぼ一致している。ラガルド総裁会見などで今後の利上げについての姿勢が示されるかどうかがポイントとなる。ユーロ円は、ドル円同様に世界的な株安に伴う円高圧力が意識される。ECB理事会までは174.50円から177.50円のレンジを中心とした推移か。ECBで今後の利上げサイクル継続が示されると、178円トライの可能性がありそうだ。
用語の解説
| 200日移動平均線 | 過去200営業日の終値の平均値を結んだテクニカル分析の代表的な指標。中長期的な相場の方向性(トレンド)を判断する上で、機関投資家をはじめ世界中の市場参加者が最も重視するレジスタンス・サポートラインの一つとされる。価格が200日線を上回っていれば中長期的な上昇トレンド、下回っていれば下降トレンドとみなされることが多い。先週のドル円はAI関連株安に伴うリスク回避の円買いによってこのラインを下放れており、これまでのサポートから上値抵抗線(レジスタンス)へ転換したかが試されている。 |
|---|---|
| ZEW景況感指数 | ドイツ・マインツにある欧州経済研究センター(ZEW)が、アナリストや機関投資家などへの向こう6か月のドイツの景気見通しに関するアンケート調査を実施、その結果をもとに算出する景気指標。良くなると答えた(楽観)割合から、悪くなると答えた(悲観)割合を引いて算出する。プラスであれば景気改善を見込む回答が多く、マイナスになれば景気悪化を見込む回答が多いことを示す。ドイツIfo景況感指数の先行指標としても注目されている。 |
今週の注目指標
| 英秋季予算案発表 10月28日 時間未定 ☆☆☆ | 英国のヒーリー財務相が下院で発表する秋季予算案(オータム・ステートメント)。今年7月のバーナム政権発足後初となる本格的な財政運営計画であり、市場の最大の関心事となっている。前政権から引き継いだ巨額の財政赤字の縮小に向け、増税や歳出削減の道筋をどのように示すかが焦点である。 市場では、ヒーリー財務相が財政規律を堅持し、国債増発を抑える現実的な方針を示すとの期待がポンドの安心感につながっている。財政健全化への信頼が確認されれば、根強い英中銀の利上げ観測と相まってポンド買いを後押しする可能性がある一方、財政悪化懸念が意識された場合はポンド売りを誘発するリスクがある。ポンド円は208.00円トライが意識される展開が見込まれる。 |
|---|---|
| 米連邦公開市場委員会(FOMC) 10月29日03:00 ☆☆☆ | 米FOMCは日本時間29日午前3時に結果が発表され、午前3時半からウォーシュFRB議長が会見を行う。前回9月会合では、約3年ぶりに政策金利が引き上げられ、FF金利翌日物誘導目標は3.75〜4.00%となった。利上げは全会一致での決定だった。 同会合で公表された経済見通し(SEP)における2026年末時点の政策金利見通し(ドットチャート)では、ウォーシュ議長を除く18名のメンバーのうち16名が年内1回以上の利上げを示し、そのうち1回の利上げを見込むメンバーが12名となっている。発表後は10月、12月の連続利上げ期待が広がり、原油高への警戒が強まった9月28日時点では短期金利市場での10月利上げ確率が70%を超える展開も見られた。 しかし、10月2日に発表された米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を大きく下回り、前回値も下方修正される弱い結果となった。失業率の予想外の悪化や平均時給の伸び悩みなど厳しい内容を受け、10月の利上げ期待は後退した。その後発表された9月の米消費者物価指数・生産者物価指数は強めの伸びとなったものの、利上げを急ぐほどではないとの見方から利上げ観測の後退が続き、直近では90%程度が据え置きを見込む状況となっている。先週後半の半導体を中心としたAI・ハイテク関連株の下落も、今回の会合での据え置き見通しにつながっている。 注目は声明文、投票の内訳、そして会合後の議長会見となる。もっともウォーシュ議長の就任後、声明からはフォワードガイダンスが削られ、議長会見も先行きについて具体的な言及を避けるスタンスが続いている。そうした中、AI関連企業の巨額投資への懸念に端を発した信用不安などへの言及があるかどうかがポイントとなりそうだ。ドル売りが優勢となれば、ドル円も155.00円に向けた下値模索が強まると予想される。 |
| 日銀金融政策決定会合 10月30日 正午前後 ☆☆☆ | 日銀が政策金利および「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」を発表する。先週発表された全国CPI(生鮮除くコア)は底堅い伸びを示したものの、城内経済財政相のデフレ脱却に対する慎重姿勢や、世界的なハイテク株安・市場の不安定化を受けて、今回の会合での政策金利据え置き(利上げ見送り)がコンセンサスとなっている。 焦点は、展望レポートにおける物価見通しの改定内容と、会合後の植田総裁の記者会見である。氷見野副総裁の発言通り、経済・物価見通しに沿った利上げ継続姿勢を明確にし、12月会合での追加利上げを強く示唆するタカ派的なトーンとなれば、ドル円が155円割れを試す一段の円高トリガーとなる可能性がある。 |
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